2001年 5月27日 作成 対訳本を読む >> 目次 (テーマごと)
2006年 8月 1日 補遺  



 TH さん、あなたも パソコン の使いかたに慣れてきたので、(以前に教えた 「ウラワザ」 として) CD-ROM 版の英和辞典を使って 「自分用の和英辞典」 を作成し始めましたね。そして、(あなたは仕事が忙しくて、英語の本を読むためのまとまった時間的な余裕がないから) 細切れの空き時間を効率的に使って、英文の百科事典の項目も読むようになりましたね。
 この 2つの勉強は、思いの外に、愉しいでしょう。

 きょうは、対訳本について話しましょう。

 対訳本 (英語と日本語の対訳本) は、英語の原本を通読する余裕がない忙しい人々にとって、英語を効率的・効果的に習得できる手段です。まず、最初に、日本語を読んで下さい。そして、日本語のなかで、「良い表現 (英訳して使いたい表現)」 や 「英訳するのが、なかなか、むずかしい表現」 を見つけたら、それらに対応する英語の表現を読んで下さい。そして、パソコン を使って、それらの表現を収集して、「自分用の和英辞典」 を作ればよいでしょう。
 対訳本には、英文の古典文学なども数多く出版されているのですが、「漫画」 や 「映画の シナリオ」 のほうが読みやすいでしょうね。以下の 2つの 「漫画」 をお薦めします。

   (1) DILBERT (by Scott Adams)

   (2) A PEANUTS BOOK (by Charles M. Schulz)

 DILBERT (「THE DILBERT PRINCIPLE」) を例にすれば、日本語の表現として 「これは一見大したことではないように思えるだろうが」 というのがあるのですが、それに対応する英語の表現は、「That might not seem like much.」 ですし、「本当のところは、人間嫌いなんだ」 は 「Bottom line, I'm just not a people person.」 です。こういう英語の表現は、市販されている和英辞典を使っても得られないでしょう。
 また、「A PEANUTS BOOK」 (いわゆる「Charlie Brown」物) を例にすれば (シリーズのなかの「A Little Boss SNOOPY」 を例にすれば)、「知らぬがホトケさ!」 は 「What you don't know won't hurt you!」 となっています。
 なかなか、「斬れる」 生きた表現ですね。

 対訳本のもう一つのお薦めは 「新約聖書(新共同訳) 」 (日本聖書協会) です。
 この新約聖書は口語訳なので、とても読みやすいですから、まいにち、こつこつと読めばいいでしょう。欧米人の思考 (英語の ロジック) を理解するには、聖書を読んたほうがいい。英語を本気になって勉強するなら 「必読書」 です。
 「マタイ による福音書 (The Gospel according to Matthew)」 を例にすれば、「ただで受けたのだから、ただで与えなさい。」 (MATTHEW 10-8) という表現を (和英辞典を使って) 英訳しようと思ったら、非常に てごわい のですが、口語訳の聖書は、以下のように 、わかりやすく表現しています。

   You have received without paying, so give without being paid.

 この 「without paying」 と 「without being paid」 は、われわれ日本人には、なかなか、使うことができない表現でしょうね。
 また、「わたしに味方しない者はわたしに敵対し、」 (MATTHEW 12-30) という表現を直ぐに英訳できますか。
 なかなかむずかしいでしょう。口語訳の聖書では、以下の表現になっています。

   Anyone who is not for me is really against me;

 さて、以下の英語の表現を口語訳聖書から借用して (MATTHEW 6-34)、きょうの話を終わりにしましょう。

   So do not worry about tomorrow; it will have enough worries of its own.
   There is no need to add to the troubles each day brings.□

 



[ 補遺 ] (2006年 8月 1日)

 本ページ の文を綴った時期は、ほぼ 5年前ですね。この 5年間に、「私の和英辞典」 は、全然、増補されなかった (苦笑)。この 5年のなかで、まず、1年ほどは (「論理 データベース 論考」 を脱稿して) 虚脱状態 (burnout)に陥っていたし、虚脱状態から回復したあとで、「IT コンサルタント の スキル」 を執筆して、いっぽうで、TM (T字形 ER手法) を意味論の観点に立って再検討を進めながら、商法・会計原則の相次ぐ改訂版を学習して、昨年 (2005年) には、TM の意味論的検討を著作 (「データベース 設計論--T字形 ER [ 関係 モデル と オブジェクト指向の統合をめざして ]) として執筆・出版して、ほとんど、英語に集中することができなかった。
 英字新聞も、記事を丁寧に読まないで、ヘッドライン のみを読む日々が多かった。

 この 5年間、私は、ほとんど、英語を丁寧に読んでこなかったので--英文日記を、まいにち、綴ってはいますが--、私の英語力は、そうとうに低下していると思う。ここらで、英語を本気になって復習しなければならないでしょうね。たとえば、英文の専門書を多量に読むとか、英文の聖書を再読するとか。

 数ヶ月前に、ひさしぶりに、書店に出向いて、辞典・英語・数学・哲学・日本史の書棚を見て回りました。「最新 和英口語辞典」 (マーク=ジュエル・鳥羽博愛 編、朝日出版社) の第三版を辞典棚で観ました--ちなみに、「字訓」 も第二版が出ていることを知りました (第二版を書棚で目にしました)。私が所蔵している 「最新 和英口語辞典」 は初版 (1992年版) です。初版から数えて 15年弱 経っていますから、例文も、初版に較べて、最新の文に入れ替えられていると想像しています。

 本 エッセー では、「対訳本を読む」 ことを テーマ にしていますが、「最新 和英口語辞典」 を対訳本として読むのも一法でしょうね。「最新 和英口語辞典」 は、「辞典」 と云っても、日本語に対応する英語を網羅的に記載しているのではなくて、ふだんの生活のなかで使っている重立った口語に対して、豊富な文例を記載した書物です。この辞典と 「最新 日米口語辞典」 (サイデンステッカー・松本道弘 編、朝日出版社) を読み比べてみるのも興味深いでしょうね。「最新 和英口語辞典」 では、たとえば、「あぶれる」 という見出しで、以下の対訳が (初版では) 記載されています。(ちなみに、「最新 日米口語辞典」 には、「あぶれる」 の記載はなかった。)

   「アルバイトに あぶれて今日も暇なんだ」
   「早く定職につきなさいよ」

    Well, free again today. Not a part-time job to be found anywhere.
    It's about time you got yourself a steady job.

 
   「君は フリーランス で働いているから気楽でいいね」
   「いや、いつ仕事に あぶれるとも限らないから、のんびりもしてられないよ」

    You're lucky working as a carefree free-lancer.
    That's what you think. I can never relax, never knowing when I'll find myself out of work.

 
 さて、以下の英文を訳したら、どういう邦訳になるかしら。
 [ これらの英文は、「最新 和英口語辞典」 から転載しました。]

    What, just a sandwich again? What a sorry excuse for a meal!
    I can't help it. I don't have the time to got out and eat.

    TV programs these days are all pretty much the same, aren't they?
    You can say that again. They all show limited imagination.

  いずれの例文も、「貧しい」 という見出し語のなかに記載されています。最初の例文 (What a sorry excuse for a meal!) は、「貧しい食事」 という意味で、2番目の例文 (They all show limited imagination) は、「発想が貧しい」 という意味です。

    I've decided to compile a Japanese-English dictionary.
    Oh? Want to bet on how long it'll last?




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  佐藤正美の問わず語り