2003年 2月16日 作成 計画の作成 (タイムバケット と スラック) >> 目次 (テーマ ごと)
2008年 3月 1日 補遺  


 
 TH さん、きょうは、「計画」 の作成について、再度、考えてみましょう。

 以前、生涯計画をはじめとして、いくつかの種類の計画を作成することを述べてみました。
 計画を作成する目的は 「自らを規制する」 ことである、と勘違いされても困る。
 たしかに、作成された計画どおりに、課業を順々に消化することは 「自らを規制する」 ことですが、計画を作成する目的は課業を消化することにあるのではない、と思う。

 以前 (94ページ、「問題意識」)、ヒルベルト の以下の言葉を引用しました。

 「問題が正しく立てられれば、それはすでになかば解かれたのである」

 そして、実社会 (仕事) でも、「問題 (テーマ)」 を形成することが最大にむずかしいので、いかにして、issue (潜在的な問題点) を形にするかという点を論点にしました。それを、もう少し、一般的な言いかたにすれば、我々は前を向いて (将来、あるいは、これからやりたいことを向いて) 生き、後を向いて (過去、あるいは、終わったことを向いて) 理解する、と言っても良いでしょう。

 おそらく、一日の生活のなかで、睡眠や食事などの生理的事象を除いてみれば、一日を愉しく過ごしたいと思えば、「きょう、どのようにして過ごそうか」 と考えるでしょう。そして、そういうふうに考える余裕のない日々が続けば──たとえば、仕事に追われているとか──、我々は苛立ちを覚えて、余裕を得たいと願うでしょう。その余裕は 「休息したい」 ということかもしれないし、「ほかにやりたいことがある」 と思うかもしれない。しばらく休息した後に感じることは、おそらく、「さて、次に、なにをしようか」 ということが多いと思う。つまり、我々は、たいがい、夢 (やりたいこと) を計画しているのです。まだ形にはなっていないけれど、形にできるかもしれないことに対して興味を抱いているのです。
 つまり、「計画される夢」 を抱いているのです。

 そういうふうに考えれば、計画を作成する目的は、夢 (可能性) を具体化することにある、といっていいでしょうね。それを 「夢みる計画」 といっていいでしょう。そういうふうに考えれば、計画を作成する目的は 「自らを規制する」 ことではないことに気づくでしょう。逆に言えば、「規制されている」 というふうに感じるような計画は (実行するためには) 無理がある。

 計画は、普通、タイムバケット 形式(time-bucket、期間とか時間帯に区切る形式) にしますが、計画を実現するためには、1つの バケット のなかに、どれくらいの量を割り当てれば良いか、という点を考えなければならないのですが、おそらく、自らの能力に対して、80% から 120%の負荷になるようにするのが良いでしょう。
 たとえば、読書を例にすれば、もし、時間当たり 60ページ を読破できるのであれば、50ページ から 70ページ が妥当でしょうね。80%以下であれば、余裕がありすぎて だらけてしまうし、120%以上では、過負荷になって途中で投げ出してしまうでしょう。

 それから、期間に対しては スラック (slack、ゆるみ・たるみ) を考慮したほうがいいでしょう。
 スラック は 20%から 30%を考慮すればいいでしょうね。

 たとえば、読書を例にすれば、7日間で読破する計画なら、2日ほどの スラック (予備日) を考慮して、9日間として計画すればいい。ただし、スラック (予備日) は緩衝域であって、スラック に対して予定を記入してはいけない。もし、計画どおりに、7日間で読破できれば、スラック として用意されていた 2日間を休息日にしてもいいし、スラック がなかったことにして、直ぐさま、新たな計画を作成してもいい──私は、たいがい、「ご褒美 (ほうび)」 として休息日にしていますが (笑)。

 20%から 30%の スラック を用意していても消化できなかった計画は──たとえば、ほかに偶発的事象が起こって緊急に対応しなければならなかったことを除けば──期間の見積もりそのものが杜撰 (ずさん) だったのでしょうね。

 



[ 読みかた ] (2008年 3月 1日)

 本 エッセー では、「計画の立てかた」 を スラック の観点から述べてみました。やりかた を具体的に記述しているので、取り立てて、補遺はいらないでしょう。

 本 エッセー では、「夢を具体化するための計画」 として読書計画を例にしていますが、学習 テーマ は、みずからが興味を抱いている テーマ を前提にしています。ただ、興味を抱いている テーマ のみが計画対象になるのではなくて、ときには、「(興味を感じていなくても、) やらなければならない」 テーマ もあるでしょうね。とくに、これから実力を養う段階にある若い世代では、みずからが関与している仕事に関して、まず、全般的な知識を習得しなければならないでしょうから、若い頃の計画というのは、どうしても、「やらなければならない」 テーマ を多く扱うことになります。それでも、その計画は、みずからの 「夢」 を実現するための計画であるという性質には変わりないでしょうね。
 もし、「夢」 がないとしたら、みずからの生活のしかたを根本的に見直さなければならないかもしれない──というのは、「『目的』 (something to live for) がない」 ということは、生活の軸がないということと同じだから。

 「やりたいこと」 (あるいは、「やらなければならないこと」) を定立したならば、「計画」 というのは、以下の 2点を適切に割り振ることでしょうね (58 ページ を参照して下さい)。

 (1) priority
 (2) capacity

 本 エッセー では、(2) を割り振るやりかたを述べてみました。
 本 エッセー を読んだあとで、58ページ を読んでみて下さい。




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  佐藤正美の問わず語り