2003年11月16日 作成 「実用的な文」 と 「論理的な文」 >> 目次 (テーマ ごと)
2008年12月 1日 補遺  


 
 TH さん、あなたは、今度、書物を執筆することになって、どのようにして文章を綴ればよいのか悩んでいる、と言っていましたね。そこで、今回から、しばらくの間、文章の綴りかたについて お話しましょう。

 
● 文章には、実用性の高い文章と芸術性の高い文章がある。

 「文章」 とは、いくつかの文 (センテンス) を集めて、話のすじを整えて構成した記述のことをいいます。
 文章には、いろいろの種類がありますが、「伝達の目的」 という観点から判断すれば、以下の 2つになるでしょう。

  - 実用性の高い文章
  - 芸術性の高い文章

 「実用性の高い文章」 というのは、おもに、知識を伝達する文章のことをいいます。
 たとえば、提案書・企画書・論文・レポート・報告文・報道文などの文章が、そうです。
 「芸術性の高い文章」 というのは、おもに、感情に訴える文章のことをいいます。
 たとえば、小説・詩歌などがそうです。

 「実用性の高い文章」 であれ「芸術性の高い文章」 であれ、文章は 「構成物」 ですから、文章を構成するための 「基本的な作法 (約束事)」 があります。「基本的な作法」 は、文章の目的ごとにちがいます。
 「実用性の高い文章」 は、知識を伝達することを目的にしていますので、「基本的な作法」 としては、「論理展開の作法」 が大切な点になります。つまり、「実用性の高い文章」 は 「論理的な文章」 でなければならない、ということです。
 いっぽう、「芸術性の高い文章」 は、感情に訴えることを目的にしていますから、「文体 (作者らしい文章表現上の特徴)」 が作法の大切な点になります。

 
● 実用性の高い文章は、知識を伝達することが目的である。

 作文技術といえば、「あの人は文章を書くのが上手だ。」 とか 「私は作文が下手だ。」 ということが話題になりますが、美しい語句を用いて修飾の凝った文章を綴ろうとすれば、上手・下手とか得意・苦手という意識が出てきます。「芸術性の高い文章」 を綴る際には、「文体」 が大切なのですが、「実用性の高い文章」 では、美しい文章を綴るのが目的ではなくて、知識を伝達することが目的ですので、以下の 3つの技術を習得すればよいのです。

  - 正しい文 (センテンス) を作成する。
  - 文 (センテンス) を並べて、段落 (パラグラフ) を構成する。
  - 段落 (パラグラフ) を並べて、文章を構成する。

 つまり、「実用性の高い文章」 は、論理的に構成されていることが大切なのです
 論理的に構成するやりかたは、だれでも、少し練習すれば、習得できます。

 実用的な文章は用件を伝えることができなければ悪文です。実用的な文章は、知識の伝達を目的としていますので、知識を正しく伝達できなければ、実用的な文章として役に立ちません。
 次回から、実用的な文を綴るための基本的な コツ を考えてみましょう。

 



[ 読みかた ] (2008年12月 1日)

 私は、いままで、8 冊の書物を執筆してきましたが──近々 (今月か、来月に)、9 冊目の拙著が出版されるので、9 冊を執筆してきたと言ってもいいのですが──、遺憾ながら、作文が下手くそであることを認めます。かつて、ウェブ (The web) 上で、私の文体に対して 「高慢さが芸になっていない」 という評が出たそうです (笑)。もし、私が小説家であれば、「文体」 を こだわるでしょうが、私は システム・エンジニア として 私の研究してきたことを世に問うているのであって、(文が論理的に構成されていれば、) 文体に対して こだわってはいない。ちなみに、拙著のすべてを校正・編集していただいたひとによれば、私の文の特徴点は、読点が多いことだそうです。

 実用文を綴る際の注意点を、私自身が確認する目的で、数回にわたって まとめてみたいと思って、本 エッセー を綴りました。齢 (よわい) 50歳を超えて、すでに、幾冊もの著作を執筆してきた人物には、執筆し続けてきたがゆえに こびりついてしまった 「癖」 があり、「実用文の書きかた」 を最初から学習し直して、文の作成法を変えることは難しいので、いままでの執筆法を前提にしながらも、「癖」 を なんとか矯正したい思いで、本 エッセー を綴りました。

 若いひとは──いまから書物を執筆するひとは、「癖」 が こびりついていないので──、まず、以下の書物を読んで、正当な 「実用文の書きかた」 を習得して下さい。

    「コミュニケーション 技術」、篠田義明、中公新書。





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  佐藤正美の問わず語り