2004年 8月 1日 作成 | 読書のしかた (定義の パラドックス) | >> 目次 (テーマ ごと) |
2009年 8月16日 補遺 |
「定義」 というのは、或る曖昧な概念を、それよりも明確な概念にすることです。
概念 (名辞) は、内包 (性質) と外延 (集合) を使って記述できます。
被定義語と定義語の関係を考えるために、被定義語を被定義項として、定義語を定義項としましょう。 つまり、「被定義項 a と定義項 b が同一 (あるいは、類似)している」 と判断するためには、a も b も、ともに、明確でなければならない、ということです。a が明確なら、定義などいらないでしょう (笑)。逆に言えば、a が明確なら、「定義」 に関する定義──曖昧な概念を明確にすること──と矛盾することになりますね (笑)。 用語辞典のなかに記述されている定義を調べていたら、さらに、定義語の定義を、芋蔓式に調べなければならなくなって、無限後退に陥ってしまいますね。したがって、無限後退の鎖を断ち切るには、定義語のいくつかは、「(経験的事実として) 直接に知っている」 事物を示していなければならないでしょうね。そういう言葉を、いくつ選ぶか、という点が、たぶん、辞典を編集するときのむずかしさでしょうね。 専門外の用語 (の定義) を調べていて、皆目、理解できない、ということがあるのですが、きっと、その領域では、「直接に知っている」 とされる基本語を知らないから、そういう事態に陥るのでしょうね。 |
[ 読みかた ] (2009年 8月16日)
本 エッセー を読んだひとは、「被定義項 a と定義項 b が同一 (あるいは、類似) していると判断するためには、a も b も、ともに明確でなければならないので、a が明確なら、定義などいらない」 という文について、「詭弁」 の感を抱いたのではないかしら (笑)。その理由は、たぶん、「a が明確なら、定義などいらない」 という文が原因でしょうね──この文を綴ったときに、私は、「定義項を すでに知っている」 という前提を置いていました──たとえば、その定義項を使っている専門家を前提にしていました。 したがって、もし、或る専門領域で使われている語を知らない人たちに対して、その語を説明するのであれば、当然ながら、被定義項を使って定義項を 「説明 (あるいは、解釈)」 しなければならないでしょう。自然言語について、定義項を収録した書物が 「辞典」 でしょうね。 さて、本 エッセー は、数学の 「解析 (analysis)」 手続きを前提にして綴られています。数学の 「解析」 とは、証明しなければならない対象 A が存在しているとき、A が成り立つためには、B1 が成り立たなければならないことと示し、さらに、B1 が成り立つためには、B2 が成り立たなければならないことを示すというふうに、以下のように、順次、対象を導出する手順です。 A → B1 → B2 → ... → Bn. そして、この手続きの最終項 Bn では、「既知の ことがら」 が導入されて、「解析」 の手続きは そこで 「打ち止め」 とされます。 欧米の英語学習辞典では、この 「解析」 手続きを前提にして、ことば を定義している辞典があります──たとえば、LONGMAN Dictionary of Contemporary English や OXFORD Advanced Learner's Dictionary of Current English は、「既知の ことがら」 として基本単語 2000語を選んで、その 2000語を使って (それらの辞典に収録されている) 語を定義しています。日本語の辞典では──日本で出版されている国語辞典では──、そういうやりかたを導入している辞典は存在しないようです。LONGMAN や OXFORD が そういうやりかたを導入しているので、英語圏以外で育ったひとでも外国語である英語を学習するときに使いやすい辞典になっています。この点に関しては、本 ホームページ の 22ページを参照してください。 |
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