2005年11月16日 作成 | 文を綴るための辞典 (名言集) | >> 目次 (テーマ ごと) |
2010年11月16日 補遺 |
「名言集」 を辞典と云うのは奇妙に感じられるかもしれないけれど、「名言集」 を辞典として使えます。
(1) 「幸福と希望と人生」 これらの書名が、本 ホームページ 「思想の花びら」 では、「テーマ ごと」 の分類標題として流用されていることを気づかれた人たちもいるでしょう。それぞれの冊子の大きさは、新書本ほどです。編者は、故・河盛好蔵 氏です。
国語辞典に対して、「世界名言全書」 を文例集として、私は使っています。
[ 職業 ] (名) 生活していくためにする仕事
次に、職業に関して、どういう考えかたがあるのか、という点を、「世界名言全書」 を使って調べます。
行動、決断、実行、活動、仕事、労苦、働くこと、労働、勤労、勤勉、怠惰、労働は人生の条件、労働と貧乏、 これらの重要細目 (下位概念、サブセット) が、「職業」 (上位概念、セット) に対して、網羅性を実現しているかどうか、という点を調べるのは、非常に しんどい調査になるので、そういう検討を省いて──河盛氏の分類を是認にして──、これらの重要細目のなかから、みずからの テーマ を選びましょう。重要細目のなかにも、中核概念と同じ言いかたの 「職業」 がありますね。重要細目の 「職業」 を読んでみます (86 ページ、87 ページ)。 そこには、11 編の引用文が記載されていますが、そのなかから、以下の文が、私の興味を惹きました。
私はじぶんの人生をつくり上げるために努力して来た。それが私の職業であり、仕事であった。
じぶんの職業を吹聴する人間ほどみじめなものはない。
ひとはその制服のとおりの人間になる。
ともかく、私は、じぶんの職業の命ずる特殊な具体的技術のなかに、そのなかだけに、私の考え方、
いかなる職業でもじぶんが支配する限り愉快であり、服従する限り不愉快である。電車の運転手は
ひとはその制服のとおりの人間になる。
いかなる職業でもじぶんが支配する限り愉快であり、服従する限り不愉快である。電車の運転手は
ともかく、私は、じぶんの職業の命ずる特殊な具体的技術のなかに、そのなかだけに、私の考え方、
じぶんの職業を吹聴する人間ほどみじめなものはない。
私はじぶんの人生をつくり上げるために努力して来た。それが私の職業であり、仕事であった。
文章 (1つの意見) を作成することなど、(以上に述べてきたようにすれば、) 簡単な仕業です。 |
[ 読みかた ] (2010年11月16日)
本 エッセー では、「名言集」 を使って文を綴る やりかた を具体的に説明していますが、そういう やりかた で綴った文が、書き手の 「個性」 を伝えているかどうか──言い換えれば、書き手の 「実感」 で綴られているか──は、べつの論点です。「名言集」 を読んで 「材料」 を仕入れて、たとえ、「じぶんの」 ことば で綴ったとしても、書き手の 「実感」 が込められていない文というのは 「白々しい」 と感知できるでしょう。書き手の idea (と brief) が示されていない文を読むのは waste of time でしょう。読みたい書物が豊富に存在しているので、same old な考えを述べた書物を読みたかない。 モーツァルト の音楽を真似るとか モジリアニ の絵を真似ることは、私には、毛頭、できないけれど、ウィトゲンシュタイン の ことば を真似るとか小林秀雄の ことば を真似ることはできます。「コピペ (コピー & ペースト)」 盛りの文も文になるというのが ことば の性質そのものですね。それが ことば の 「公共性」 の利点であるのですが、他人 (ひと) の ことば を読んで、じぶんが うっかりしていると、まるで、じぶんでも そういう ことば が簡単に思い浮かぶように思い込んでしまう。 「名言集」 は、たいがい、天才たちの遺した ことば を収録しているので、しかも、それらの ことば を文脈から切り離して収録しているので、さまざまな 「解釈」 ができるでしょう。そういう意味では、かれらの ことば は、seminal です。そうであれば、かれらの ことば を そのまま借用しないで、かれらの ことば に ispire されて生じた思いを じぶんの ことば で綴るようにすればいいでしょう。そうすれば、copycat にならない。 逆に言えば、じぶんを inspirit する [ してくれる ] 材料は、「上質な」 ほうがいい、ということです。歴史に名を遺した天才たちの ことば は、最上質な材料です。だから、私は 「名言集」 が好きです。 |
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