芭蕉・蕪村・西行・良寛 | >> 目次 (テーマごと) |
以下に掲載する書物は、芭蕉・蕪村・西行・良寛 を、それぞれ、単独に 「研究」 しようとして所蔵しているのではなくて、文学史のなかで、日本人の 「考えかた」 を知りたいために所蔵しています。 それが目的なので、文献を、研究のために、網羅的に収集しているのではないことを御了承ください。 |
[ 読みかた ] (2008年 6月16日)
西行の歌に関して、本 ホームページ 「反 コンピュータ 的断章」 (2008年 5月 8日) のなかで、小林秀雄 氏の評論文 「西行」 を まとめてみましたので、読んでみてください。その評論文を読めば、ひとりの歌人を鑑賞するためには、歌を作られた順に跡追うのが適切だとわかるでしょう──「万事、その道を論じるには、まず その道を行った人を論じるのが早道です」 と荻生徂徠が言ったように、歌に限らず、およそ、「その道を行った人」 を理解するためには、そのひとの作品を年代順に鑑賞するのが正しい やりかた でしょうね。ちなみに、荻生徂徠 (1666年〜1728年) は松尾芭蕉 (1644年〜1694年) の 22歳年下で、芭蕉が 51歳亡くなったときに、徂徠は 29歳でした。与謝蕪村は、1716年生まれ (1783年没、享年 68歳) なので、徂徠が亡くなったとき、12歳でした。良寛は、1758年生まれ (1831年没) なので、蕪村が亡くなったときに、25歳でした。 松尾芭蕉は、西行 (1118年〜1189年) の歌を高く評価していました──小林秀雄 氏の評論文 「西行」 のなかで、芭蕉の西行評が以下のように綴られています。
特に表現上の新味を考案するという風な心労は、殆ど彼の知らなかったところであるまいか。即興は さて、芭蕉の歌跡 (作品集) を以下に一覧します。
「三十番発句合」 (後に 「貝おほひ」 として刊行、1672年) なお、「芭蕉七部集」 というのは、享保 17年 (1732年)、佐久間柳居 の編で、芭蕉一代の撰集のなかから、重立った七部を集めた作品集のことです──収められている撰集は、「冬の日」 「春の日」 「曠野」 「ひさご」 「猿蓑」 「炭俵」 「続猿蓑」 です。ちなみに、世上有名になった句 「古池や蛙飛びこむ水の音」 は、「春の日」 に収録されています。
芭蕉の人生は、句 「住みつかぬ旅のこころや置火燵」 に詠まれたように、「漂白の詩人」 でした。生地は、伊賀上野です。十代の頃から俳句を作っていましたが、23歳のときに生地を離れて京都に出て、貞門・談林の俳諧 (貞門とは松永貞徳が興した俳諧作風、談林とは西山宗因が興した俳諧作風) に親しんでいました──そして、一時、北村季吟 (貞門俳人) にも師事しました。29歳のとき、江戸に下っています。江戸では、神田上水の水道工事などの仕事をして生計を立て、談林調の俳諧を詠んでいます。延宝八年 (1680年) に、杉山杉風 (すぎやまさんぷう) の助力で、深川の草庵に移り住んで、「隠者」 としての くらし をはじめました──この頃に、「詫び (わび)」 の枯淡・閑寂な美的理念を描写するために、漢詩文調の用字用語を使って、新たな句境 (いわゆる蕉風) の一歩を踏み出したとのこと。 初しぐれ 猿も小蓑 (こみの) を ほしげ也 (なり) 芭蕉の歌は、「通俗性のなかに風雅な情調 (実ありて悲しびをそふる)」 を描写したと、文芸の シロート である私が言ったら僭越になるかしら──通俗性は具体性を帯び、そして、「風雅」 というのは 「俳諧」 のことで、したがって、「俳諧」 というのが、蕉風では、「わび」 「軽み」 「さび」 「しをり」 「細み」 ということでしょうね。芭蕉の句のなかで、私の一番に好きな句は辞世句です──「旅に病み 夢は枯野を かけ廻 (めぐ) る」。 芭蕉の死後に俳諧が俗化していったので、蕉風に依るべきだと言い立てたのが蕪村です。蕪村は、早野巴人 (はやのはじん)に師事していました──早野巴人は蕉門十哲の一人 榎本其角の弟子でした。早野巴人の亡きあと、蕪村は、(奥州を行脚してから、)京都に定住しました。画に専念して南宋画を学んで、いわゆる文人画への志向をつよめ、ふたたび、俳諧に向かいました。世上有名な蕪村の句 「菜の花や月は東に日は西に」 に描写されているように、蕪村の作風は、写実性・低徊性 (脱俗高踏のこと)・浪漫性に特徴があるようです。徂徠風に言えば、「俗によって雅を乱すことは許さない」──もっとも、徂徠の云う 「雅」 というのは 「漢語」 のことであって、私が ここで言う意味とは違うのですが、私は、徂徠の ことば の意味を拡張して使っています。 良寛の号は、「大愚」。禅僧です。書・漢詩・和歌で すぐれた作品を遺しました。かれの作品は 「天真爛漫」 と評されていますが──たしかに、どの系統にも属さない作風ですが──、私は、かれの 「通俗性のなかに風雅な情調 (実ありて悲しびをそふる)」 を描写した・以下に記載する詩が大好きです (この詩は、本 ホームページ 「思想の花びら」 のなかで引用しました)。 君看雙眼色 不語似無憂 [ 君看よや 雙眼の色 語らざるは憂なきことをしめす ] 2001年 3月に、本 ホームページ 「佐藤正美の問わず語り」 (16 ページ、「『もの』 語彙と 『こと』 語彙」) を初めて綴ったとき、「私には歌がわからない」 と吐露しました。そして、50歳を過ぎた頃 (2005年頃) から、やっと、歌に感応するようになってきました (私は、いま、54歳になろうとしています)。 |
▼ [ 史料、資料 ] ● 芭蕉語彙、宇田零雨、青土社 ● 奥の細道 総索引、井本農一・原岡秀人 共著、明治書院 ● 芭蕉・蕪村 発句総索引 [ 本文索引篇・語彙索引篇 ]、道本武彦・谷地快一 編集、角川書店 ● 芭蕉直筆 奥の細道、岩波書店 ● 定本 芭蕉大成、緒方 仂・加藤楸邨・小西甚一・広田二郎・峯村文人 共著、三省堂 ● 日本古典文學体系 芭蕉文集、杉浦正一郎・宮本三郎・荻野 清 校注、岩波書店 ● 芭蕉全句集、乾 裕幸・桜井武二郎・永野 仁 編、おうふう ● 蕪村全句集、藤田真一・清登典子 編、おうふう ● 新訂増補 西行全集、尾山篤二郎 編著、五月書房 ● 良寛用語索引、塩浦林也 編、笠間索引叢刊 107 ● 良寛全集、東郷豊治 編著、東京創元社 |
▼ [ 概説書、解説書 ] ● 露伴評釋 芭蕉七部集、中央公論社刊行 ● 去来抄評釋、岡本 明 著、名著刊行会 ● おくのほそ道 古典を読む 2、安東次男、岩波書店 ● 鑑賞 奥の細道、内山一也 著、笠間書院刊 ● 奥の細道 講義、麻生磯次 著、明治書院刊 ● 諸注評釈 芭蕉俳句大成、岩田九郎 著、明治書院 ● 全釋 良寛詩集、東郷豊治 編著、創元社 ● 沙門 良寛 自筆本「草堂詩集」を読む、柳田聖山、人文書院 ● 良寛詩集、渡辺秀英 著、木耳社 ● 良寛詩集譯、飯田利行、大法輪閣刊 |
▼ [ 辞書、事典 ] ● 芭蕉辞典、飯野哲二 編、東京堂出版 ● 良寛字典、駒井鷲静 編著、雄山閣 |
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