思想の花びら 2020年 3月 1日


 ●  アラン (哲学者) のことば

  デッサン の技術は、なるほど モデル にしたがうが、この技術のなかにも常に デッサン 自体にしたがって デッサン を続けたり止めたりするある運動が存するので、デッサン の非常な美しさが、モデル との類似には由来しないゆえんなのである。(略) この事情はたとえば モリエール、ことに シェクスピア など書き方に一致している。彼らの仕事の美しさは、主題もなければ、あらかじめ定められたものにもない。むしろいわば筆の勢いというものにある。すなわちあやまたずに持続する、行為であり同時に自由な判断であるものにある。(略) 必然と自由とをともに表現している点で、音楽に似ている。

 



 ●  亀井勝一郎 (批評家) のことば

  私のとくに強調したいのは、文学史に屡々みられる分類と限定と定義の虚妄である。一作家は一個の独自な運命である。社会的条件や文学思潮の影響はまぬかれないが、彼をして独自のものたらしめた原因をさぐり、彼がどのやうな固有の テーマ を提出し、いかに答へようとしたかを、個人に即してみつめなければならない。

 


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