思想の花びら 2023年 1月15日


 ●  アラン (哲学者) のことば

  デカルト は、僕らが僕らの自由意志についてもっている情操を寛大とよぼうとしたが、これは非常にたくみな名づけかただ。だが魂の立派さとはただなにか立派なものを所有しているというところにはない、すべての物の審判者であり、自然、すべての物の征服者である、さらにまた、人間の弱点についても正確な尺度を持ち、これに対して寛にも酷にも偏することなく、最も深い意味で正しい態度をとるものでなければならぬ。

 



 ●  亀井勝一郎 (批評家) のことば

  困難の設定、決断あるいは拒絶の精神、未完成の自覚、この三つが人生を形成する基本ではないかと私は思っている。この三つのものを回避したところに ダンテ のいう怯懦の群が生ずるのではないか。しかし考えてみると、我々の心の中にはこうした怯懦の状態が常に起りやすい。「地獄篇」 のこの一篇を、ただ特殊な人間の落ちる地獄とはみずに、すべての人間に普遍的な、内在する悪として正視すべきであろう。「地獄」 に堕ちた人々とは、実は我々自身である。その中でも最も侮蔑された存在である 「怯懦の群」 を、自分もそのひとりと考えてみることだ。やりきれないほどつらいことだが、まさにその故に ダンテ は最も激しくこれを撃ったのではなかろうか。「神にも神の敵にも喜ばれない卑劣者の群」 とは、いつの世にも地衣類のように執拗に生きているものである。

 


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