思想の花びら 2023年 2月 1日


 ●  アラン (哲学者) のことば

  多くのことを大目に見なくてはならぬとはだれでもよく知っている。情熱のゆえに許せなくなったり、他人の言葉もゆだんも意図もことごとく勘定して見のがせない人は意地の悪い人だ、不幸な人だ。だが、許すとはどういうことかをよく知らねばならぬ。もう以後しないとか、悪かったとか、要するに意見が変わったところを見せてくれなければ、寛大になれぬ人がある。僕に言わせるとそういう人は物を値切るようなつまらぬところがあるのだが、とくに、あらゆる衝動に思想を仮定する性癖、しばしば言うことだが、精神を獣の手に渡す性癖があるのだ。

 



 ●  亀井勝一郎 (批評家) のことば

  ソクラテス の知恵とは、我々が自ら知恵と思いこんでいるものの無価値と空しさを、それぞれの場合に応じて具体的に指摘する知恵であった。その根本に ソクラテス の ギリシャ の神々への信仰がある。彼の知恵とは信仰からくる明晰である。神秘的なものと合理的なものとの見事な結合がここにみられる。しかも信仰そのものを裸のまま説かず、それは常に明晰による対象の正確な認知というかたちであらわれた。だから彼の明晰さが、彼の告発者には不信仰にみえたのである。

 


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