2003年 8月 1日 作成 | 「理論編第 4章 (述語と集合)」 を読む | >> 目次に もどる |
2006年 5月 1日 更新 |
● 述語と性質 命題論理では、「主語-述語」が 1つの単位として判断の対象とされたが、述語論理では、主語と述語は切り離して判断の対象とされる。
個体は 「定義不能語」 である。
「一般化」 とは、対象を 「共通の性質」 に従って総括して、対象の 「集合」 を形成することをいう。
命題関数 「x は性質 P を持っている」 は、集合 {x ∈ A} と同値である (論理的に等しい)。
1変数 (単項ともいう) の関数 P (x) は、「性質 P」 を判断式にした集合を示す。
a1 は男である。 たとえば、性質 Pが 「男である」 という述語であれば、P (x) を使って、「男」の集合を作ることができる。 {a1, a2} また、性質 Pが 「女である」 という述語であれば、P (x) を使って、「女」 の集合を作ることができる。 {b1, b2} |
[ 補遺 ] (2006年 5月 1日)
「性質」 のことを 「述語」 ということもあるが、「性質」 と 「述語」 は違う。単項述語論理では、「性質=述語」 だが、多項述語論理では、述語は関係と同値である (「述語=関係」)。すなわち、対象を 「共通の性質」 で総括して1つの集合を形成するなら、 単項述語論理式 P (x) の P は 「述語=性質」 であるが、単項述語論理式 P (x) のなかの変項が 2項になれば、P (x, y) として 2項述語論理式になる。一般的にいえば、変項が 2つ以上の命題関数を一括して多項述語論理式という。2項述語論理式 P (x, y) の述語 P は、x と y との関係を記述するので、「x と y の関係の述語」 あるいは単純に x と y の 「関係」 という。「関係 (Relation)」 は、数学的には、「関数」 である。 述語論理を使った 「個体」 の記述を考えてみれば、たとえば、ラッセル 氏の記述法では、「『1960年代の英国女王』が存在する」 という主張は、以下のことを前提にする。
(1) 或る人間 x が 1960年代に存在している。 以上の前提がすべて 「真」 であれば、x に対して、「1960年代の英国女王」 という名称を付与することができるというのが ラッセル 氏の意味で、「複合的なもの」 である。この考えかたは、述語論理の基礎になっている。 いっぽうで、「関係の論理 (aRb)」 という領域がある。2つの主語のあいだに成立する関係を 「aRb」 として記述する。「aRb」 は、「a は b に対して、関係 R にある」 と読む。関係 R は、Relation の省略形である。 述語論理は集合論で翻訳可能である。たとえば、「x は、女性である」 という論理形式は、「女性である」 という性質をもつ個体の集合として翻訳できる。すなわち、P (x) という単項述語論理式は、それに対応する集合を作ることができる。単項述語論理式 P (x) のなかの変項が 2項になれば、P (x, y) として、2項述語論理式になる。2項以上--いっぱんに、多項と云うが (n 項とも云う)--の述語論理式 P (a1, a2,..., an) を多項述語論理式 (あるいは、n 項述語論理式) と云い、多項述語論理式は、集合論を使って、「関係の論理」 に翻訳できる。すなわち、「関係の論理 (aRb)」 を R (a, b) として考えれば、多項述語論理式 P (x, y) と同型である。なお、「関係の論理」 は、当初、シュレータ゛ 氏や ト゛・モルカ゛ン 氏らが整えたが--私 (佐藤正美) は、古い文献まで遡って、「関係の論理」 を 「関係の論理」 として学習したが--、現代では、多項述語論理のなかで扱われている。多項述語論理式の一般形は、次のように記述される (「『論理 テ゛ータヘ゛ース 論考』 を読む」 のなかで、後述されているので、後日、再度、扱う)。 R {s1 ∈ X1, s2 ∈ X2,..., sn ∈ Xn ∧ P (s1, s2,..., sn)}. この式で、s は個体 (「項」 とも云う) を示し、X は、集合を示している。すなわち、たとえば、「s1 ∈ X1」 は、「s1 が X1 の メンハ゛ー である」 ことを示している。そして、上述した ラッセル 氏の記述法が、この一般形に対応する。すなわち、以下のように、考える。なお、文中、「≡」 という記号は、「同値である」 ことを示している。
(1) 或る人間 x が 1960年代に存在している。≡ P (s1) ≡ s1 ∈ X1. そして、R {s1 ∈ X1, s2 ∈ X2, s3 ∈ X3, s4 ∈ X4} として記述される個体 (主体) が ただ 1つのみ存在することを主張する。この考えかた (多項述語論理と集合論) を使って、或る テ゛ータヘ゛ース 構造を作った人物が E.F. コット゛ 氏である。その テ゛ータヘ゛ース 構造が、「リレーショナル・テ゛ータヘ゛ース (関係型 テ゛ータヘ゛ース)」 である。 |
● 内包と外延
述語論理では、P (x) を内包あるいは意味という。 或る概念が外延的に定立されるということは、その概念に対応する個体の集合が存在するということである。内包を使って正しい外延が形成されることを 「周延」 という。 |
[ 補遺 ] (2006年 5月 1日)
ここでは、「内包 (implication) と外延 (extension)」 および 「周延 (distribution)」 という概念を覚えてほしい。単純に言い切ってしまえば、「内包」 とは 「性質、述語」 で、「外延」 とは 「集合」 である。つまり、前述したように、或る性質を使って、集合を作る。述語論理は、集合論に翻訳可能であることを前述したが、述語を性質とみなして、外延を作って論理の検証をするやりかたを 「内包-外延 の論理学」 とも云う。 「共通の性質」 をもつ個体をあつめて、集合を作る。すなわち、1つの概念は、「メンハ゛ー (個体) と集合」 という単位で考える。メンハ゛ー (個体) に関する性質のことを 「周延的な性質」 といい--言い換えれば、上述したように、この性質を使って、集合を作るのだが--、集合に関する性質のことを 「集合的な性質」 という。 「個体 (実 テ゛ータ) と その集合」 を対象にする述語論理を 「第一階の述語論理」 という。いっぽう、集合を メンハ゛ー にして、さらに、その集合を作ることができる。すなわち、「集合的な性質」 を使って、さらに、上位の集合を作ることができる。たとえば、以下を考えてみる。
a1 は男である。 以上の個体を対象にして、以下の集合を作る。
男 {a1, a2}.
ここまでを、「第一階の述語論理」 と云う。
P (x). P (x) は、「個体と集合」 を示す 「第一階の述語論理」 である。F (P) は、「集合の集合 (あるいは、性質の性質)」 を示す 「第二階の述語論理」 である。 命題論理では、「真理値表 (truth table)」 を使って 「真・偽」 を検証できる一般手続きがあるが、述語論理には、「真・偽」 を判断する一般手続きがない。述語論理では、「真・偽」 を判断するために、(第一階の述語論理であれば、) 外延を作る。すなわち、集合を作って、例外がないかどうかを調べる。あるいは、高階の述語論理では、「証明」 という手続きを使う。 |
● 命題論理 (テ゛ータ 構造の生成規準) と述語論理 (テ゛ータ 集合の検証基準)
テ゛ータ 設計の目的は、周延した テ゛ータ 構造を生成する点にある。 述語論理を使えば、どのような述語 (あるいは、性質) を判断規準として使うかによって、(たとえ、周延した構造であっても、) いくつもの相違する構造が生成できる点に注意されたい。だから、私 (佐藤正美) は、述語論理を テ゛ータ 設計の技法として使わない。ただし、テ゛ータ 集合を検証するために、セット 概念を使っている。 クラス と セット のちがいについては、後日、述べる。 事業のなかで共有の伝達手段として使われている テ゛ータ は、一人の SE の価値観で構造が揺らいではいけない。それらの テ゛ータ を実地に使っている人たちが 「合意」 した判断規準を使わなければならない。そのために、私は、「合意」 された コート゛ 体系を対象にして命題論理 (「主語-述語」 を1つの単位にして論理を解析するやりかた) を使っている。 T字形 ER手法は、コート゛ 体系および自然言語を前提にして、命題論理 (「主語-述語」 の単位)を使って entity を認知して、命題論理の推論 ルール を使って 「関係」 を生成している。そして、そういうやりかたで生成された テ゛ータ 集合の周延を検証するために、述語論理 (あるいは、セット 概念)を使っている。 □ |
[ 補遺 ] (2006年 5月 1日)
この段落で記述したことは、「論理 テ゛ータヘ゛ース 論考」 のなかに綴られていない。ただ、この段落に述べられている点が、「論理 テ゛ータヘ゛ース 論考」 を執筆した理由の 1つである。ここで、私は、「認知」 を提起している。
(1) 述語論理の考えかた (「性質」 を主体に考える ラッセル 氏の やりかた) TM (T字形 ER手法) は、当初、ウィトケ゛ンシュタイン 氏の 「論理哲学論考」 を底本にして作られた。「論理哲学論考」 の中核思想とも云える概念は、以下の文であると私は判断している (以下に引用する翻訳文は、坂井秀寿 氏の訳である [ 「論理哲学論考」、法政大学出版局、1968年 ])。
4. 1432
「論理哲学論考」 の考えかたは、後年、「哲学探究」 によって否定されたが、上述した 4.1432 の考えは、一貫して変わっていないと私は判断する。「哲学探究」 が否定した点は、 「『論理哲学論考』が 「記号と現実的事実のあいだに成立していると要請した 『写像理論』」 であった。「哲学探究」 では、4.1432 の考えは、「言語 ケ゛ーム (意味の使用説)」 として、いっそう、強化されたと私は判断している。 4. 1432 では、正しいとされる文には、'a' や 'b' というふうに 引用符 (') が使われている理由は、(引用符のない 「a や b」 が これらの記号が指示している対象のことをいうのに対して、) 「ことば (記号)」 としての語-言語のことを示しているからである。すなわち、ウィトケ゛ンシュタイン 氏の狙いは、言語分析にある。そして、言語の 「意味」 が成立する 「原因」 を分析するために、「論理哲学論考」 では、現実的事実と記号とのあいだに写像が要請された。しかも、私が 「原因」 という語を使ったように、だれも否定できない因果関係を前提にして、理想言語 (人工言語) を対象にしていた。しかし、「哲学探究」 では、写像が否定されて、「反応と適用」 という行為が 「(ことばの) 意味」 の前提とされ、「日常言語」 を対象にしている。
TM (T字形 ER手法) は、当初、個体を認知するために 「identifier」 を要請して、「identifier」 として 「コート゛ 体系のなかに定義されている独立した番号」 を使い、写像を前提にして、「情報 (画面、帳票などのなかに記述されている文)」 を分析すれば、現実的事実を示すことができると考えていた。すなわち、(「identifier」 使用の理由を示さないまま、) 写像を前提にして、「情報」 の構造を作ろうとしていたのである。そのために、「identifier」 に対して適切な訳語が思い浮かばないままでいた--というのは、それをまじめに考えてはいなかったから。
ラッセル 氏流の考えかたを使った テ゛ータ 設計法が コット゛ 関係 モテ゛ル である。 |
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