2003年 8月16日 作成 | 「理論編第5章 (関係の論理)」 を読む | >> 目次に もどる |
2006年 5月16日 更新 |
第5章の「関係の論理」は、拙著「論考」を執筆する最大の理由になった章である。
本章では、「関係の論理」の数学的な通説をまとめている。
(1) 関係の論理(aRb)を関数として扱わない。 本稿では、(1)を論考の対象とする。(2)は、次回、論述する。 T字形ER手法は、コード体系および自然言語を前提にして、データの認知規準として、命題論理を使っている。しかし、命題論理では、以下の論理を解析できない。 S1 is on S2. 「主語-述語」という論理形式のほかに、主語の間に関係が成立する論理形式がある。 2つの主語間の関係を「aRb」として記述する。「aRb」は以下のように読む。 「aはbに対して関係Rにある。」 (Rは Relation の省略形である。) 「aRb」は、2つの変項 (a と b) をもつ命題関数である。 単項述語論理式 [ P(x) ] のなかの変項が2つになれば、P(x, y) として2項述語論理式になる。変項が2つ以上の命題関数を一括して多項命題関数(多項述語論理)という。2項述語論理式 [ P(x, y) ] の述語Pは、x と y との関係をあらわしているので、「x と y の関係の述語」、あるいは、単純に、x と y の「関係」ともいう。
多項述語論理式は、集合論 (直積集合) を使って、関係の論理に転換できる。 P(x, y) は、2つの変項をもつ関数 f(x, y) である。つまり、「関係」とは「関数」のことである。
「関係=関数」を前提にして、コッド氏 (Codd, E.F.) は、直積集合を使ってデータ正規形を提示した。
(1) 順序対
関数(あるいは、集合)では、順序(先行関係)が前提となる。
数学では、変項に対して、アルファベットを使えば、「すべての」データを並べることができる。 そのために、コード体系を前提にして entity を認知するT字形ER手法では、関係の論理として関数を使わないで、事業のデータを「並べられるデータ」と「並べられないデータ (並びが論点にならない、という意味)」の2つに類別して、「推論ルール」を使うことにした。「推論ルール」については、後日、述べる。 なお、null値については、後日、第6章「集合論」のなかで論点にする。 □ |
[ 補遺 ] (2006年 5月16日)
本節で述べられている論点は、やや、舌足らずであった。というのは、コッド 関係 モデル が直積集合を使った対象は 「属性値集合」 であって 「主体集合」 ではない。コッド 関係 モデル では、「主体集合」 は、包摂関係として考えられている--包摂関係は、述語論理の 「仮言」 命題に翻訳できる。
さて、本節で論点にしたのは、「関係」 の対称性・非対称性である。 事業過程の データ では、正常営業循環 (購買過程-生産過程-販売過程) のなかで、関係の非対称性を示す性質を帯びた entity と、関係の対称性を示す entity がある。TM では、関係の非対称性を示す entity を 「event」 として、関係の対称性を示す entity を 「resource」 としている。「event」 は、正常営業循環のなかで関係の対称性を示す性質として、「取引日 (できごとが起こった日)」 が帰属する。「resource」 には 「取引日」 は帰属しない。
TM では、まず、個体が認知される--「合意された認知番号」 を付与された個体が認知される。言い換えれば、TM は、属性値集合を対象にして、関係 モデル を使って主体集合を作るのではなくて、まず、認知番号を付与された個体 (主体集合) を認知する。その個体の構成は、命題論理を前提にしている。 また、TM は、個体 (主体集合) を最初に認知するので、認知できない null を 「個体の性質」 として記述する訳にはいかない。 |
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