2004年12月 1日 作成 「文献編第14章 (集合論の基礎)」 を読む >> 目次に もどる
2007年 9月 1日 更新  




 集合論は、技術として習得しなければならないのですが、数学基礎論 (現代集合論) を、はじめて学習する人が、集合論の技術を記述した書物を読んでも、理解できないし--たぶん、基本的な公式を丸暗記するのみになってしまい、金輪際、応用できないでしょうし--、集合論を嫌いになるでしょう、きっと。
 集合論を、はじめて学習するか、あるいは、(集合論が苦手だったので、) 再学習しようと思っているなら、以下の書物を、まず、読んでください。

 ● 「無限集合 (ワンポイント 双書 4)」、森 毅、共立出版

 「基数」 と 「序数」 を基本概念にして、「無限の算術」 を扱っています。そして、「ローヴェル の定式化」 (不動点定理と思っていいでしょう) を使って、「存在証明」 (不完全性定理の証明) を記述しています。

 「ローヴェル の定式化」 に関する記述は、集合論を はじめて学習する人には、むずかしいので--合成関数などの関連知識がなければ理解しにくいので--、読み飛ばしても良いでしょう。たとえば、f (x) = u (g (x, x)) の証明は、理解しにくい、と思いますので、読み飛ばしてください。

 x が集合 X の メンバー であったとして、集合 X から集合 X への写像 f (自己言及) を考えたら、f (x) = x となる点を、「不動点」 と云います。たとえば、2つの鏡 (かがみ) を対称的に立て、2つの鏡のあいだに、1つの物を置いて、どちらかの鏡のなかを観れば、1つの鏡のなかに、物を映した・もう 1つの鏡が写って、さらに、そのなかに、同じ映像が反射して、映像が、(小さくなりながら、) 延々と反射されて、ついには、映像が、「点 (てん)」 のようになりますが、その 「点」 が、「不動点」 です。つまり、メンバー と (その メンバー が帰属する) 集合が、同一である、ということです。集合論の式を使って記述すれば、x = { x } ということです。集合の { } を、関数とすれば、x = f (x) のことです。

 さて、x = f (x) のなかに、x の値として、「1」 を代入すれば、1 = f (1) となります。
 とすれば、1 = f (0) あるいは 0 = f (1) という状態を考えれば、「x = { x } 」 は、矛盾になりますね。その考えかたを使って、「ゲーデル の不完全性定理」 を証明することができる、ということさえ覚えれば、それ以上の 「深入り」 をしなくても、良いでしょう。

 この書物を読んで、集合の考えかたを理解してください。
 集合の考えかたを理解したら、次に、以下の書物を読んでください。

 ● 「集合論入門 (増補版)」、赤 摂也、培風館

 この書物は、おそらく、入門向けの集合論として、「定本」 だ、と思います。
 この書物の 「はしがき」 に綴ってある (以下の) 文が、私にとって、学習意欲を持ち続ける励みになりました。

     数学においては、あらゆるものを頭脳の中で創造するのであるから、
      数学書は、「はじめ」から書いてされあれば、原則的には子供でも読みうるはずのものである。

 
 この書物を、くりかえして、ていねいに、読んで、集合論の基本的技術を習得してください。
 (「論理 データベース 論考」では、以上の 2冊のほかにも、文献を掲載していますが、) 集合論を、はじめて学習するなら、そして、それ以上の専門的な知識をいらないなら、前述した 2冊を読めば良いでしょう。 □

 



[ 補遺 ] (2007年 9月 1日)

 集合論の学習が、もし、中学校・高校で学習した知識のみに終わるなら、甚 (はなは) だ つまらない学科だと思われてしまうでしょうね。集合論の魅力は、ロジック (論理学) といっしょに使われてはじめて感じられるのではないでしょうか。ということは、中学校・高校で、「集合」 概念 (と基本技術) を ロジック と切り離して教えることは、はたして、適切なのかどうか という疑問を私は抱いています。

 集合論を学習する前に、まず、ロジック を学習して下さい。
 ロジック を学習すれば、いずれ、集合論を学習せざるを得なくなりますから。

 ただ、もし、私が システム・エンジニア でなかったら、ロジック (および集合論) を学習しなかったでしょうね。私は、仕事上、ロジック と集合論を学習しなければならなかったので学習したのですが、いまでは、ロジック の虜囚 (りょしゅう) になっています。勿論、私は数学者でもないし ロジシャン でもないので、シロート としての学習にすぎないのですが。シロートとして、でも、みずからの仕事のなかで使う技術として、ロジック と集合論を学習するなら、拙著 「論理 データベース 論考」 くらいの中身が初級・中級 向けとして妥当かなと思っています。「論理 データベース 論考」 は、モデル 理論を学習するための基礎知識を包括的に集約したにすぎない。したがって、私は、さらに、モデル 理論を学習していますが、それも仕事上 使うからであって、仕事で使わないのであれば、モデル 理論という特殊な専門分野を学習することもなかったでしょうね。

 意味論を学習すれば、モンタギュー 文法を無視する訳にはいかないでしょう。たとえば、モンタギュー 文法は、(古典論理の) 言語 L0に対して、形式的統語論 システム を与えていますが、その カテゴリー を以下のように記述しています。

    Δ0 = { 1CT, 1V, 1C, 2C, FOR }.

 1CT は個体定項、1V は動詞句、1C は単項結合子 (否定)、2C は2項結合子 (連言、選言)、FOR は式 (主張文) の略記です。簡単な記述ですが、ロジック の基礎知識がなければ、この記述を理解できないでしょう。言い換えれば、形式的に・正確に・単純に記述された式を理解するためには、「通論」 の知識がなければならないということです。そして、「通論」 を学習するには、当然ながら、どの学問であれ、それなりの努力を費やさなければならないでしょう。いったん、ロジック (および集合論) の 「通論」 を学習すれば、その後の学習量は逓増的に拡大します。

 もし、ロジック で使われる記号だらけの式が難しそうだと感じるなら、単に 「慣れていない」 だけのことです。なぜなら、もし、あなたが日本語しか知らないとして、他の言語 (たとえば、フランス 語) を簡単だと感じますか。

 もし、ロジック に興味があるなら、そして、少しでも、学習してみたいと思っているなら、ロジック の書物と集合論の書物を--たとえ、最初、読んでいて、つまらないと感じても--、1年間ほど 「専念して」 読み続けてみて下さい。そうすれば、きっと、しだいに 「慣れて」 きて、ロジック を面白いと思うようになるでしょう。

 





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