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本書の狙い

● 個体 (項) の 「認知と関係」

データ の認知規準として、論理学では、以下の 2つがある。

 - 命題論理 (「主語-述語」 を 1つの単位として考えるやりかた)
 - 述語論理 (述語を判断規準にして、主語の集合を生成するやりかた)

集合概念には以下の 2つがある。

 - セット (set)
 - クラス (class)

個体の間に成立する 「関係」 は、論理学では、「関係の論理」 として扱われる。
2項関係 (a と b) なら、「aRb」 というふうに記述される。
「aRb」 は 「a は b に対して関係 R にある」 と読む。

 
● 関係と関数

「関係の論理 (aRb)」 は、数学では、関数 [ R (a, b) ] と同値である。
「関係」 は、数学上、「直積」 の部分集合とされる。

 
● モデル (modeling) としての成立基準

したがって、「個体と関係」 を対象とする技術として、以下の 3つが成立する。

 - 「aRb」 を関数 (直積の部分集合) として扱わない命題論理
 - 「aRb」 を関数として扱う述語論理 (セット を使う)
 - 「aRb」 を関数として扱う述語論理 (クラス を使う)

ただ、命題論理は主語間の関係を扱うことができないので、なんらかの 「関係文法」 を導入しなければ、形式的構造を作ることができない。T字形 ER手法は、命題論理を使って個体を認知して、或る関係文法を使って形式的構成を作る手法である。データベース 設計 は セット を使い、オブジェクト 指向 は クラス を使っている。いずれの流派であれ、妥当な・科学的な則として成立するためには、それらの則は 「無矛盾性」 と 「完全性」 を保証していなければならない。

「完全性」 というのは、作図された構造が幾つかの選ばれた ルール (前提) から導出されていて、いきなり、「わたしには或る ファイル が見えるが、あなたには、それが見えない」 というような不意打ちがないことをいう。すなわち、モデル が現実的事態と一致していることをいう。そのためには、モデル は 「指示規則」 と 「生成規則」 を備えていなければならない。

 
● データ 構造と アルゴリズム

従来、データ 構造と アルゴリズム の境界線が論点になってきたが、境界線は明晰に提示されなかった。本書の狙いは、「データ 構造と アルゴリズム の境界線を提示して、データ 構造のなかで吸収できる アルゴリズム を I/O 化する」 ことを証明した理論書である。

本書を理解するためには、数学基礎論の知識を習得していることを前提にしているので、「理論編」 として、数学基礎論の全般的な知識を用意してある。本書の 「理論編」 を読めば、数学基礎論の入門程度の知識は得られるようにしてある。

本書は、やや 「難解な」 中味になったかもしれないが、データ 構造と アルゴリズム に対して、「原論」 の形として問題を提起したので、「データ 設計 + オブジェクト 指向 プログラミング」 (RDB を使った ウェッブ の システム 作り) が論点になり始めた昨今、問題点の原点を把握するために読んでいただければ幸いです。



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