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本書の狙い |
● 以下の文は、本書の「はしがき」から転載しました。
いわゆる「数学基礎論」が起点となって「計算可能関数」が探究され、コンピュータが誕生しました。数学基礎論は、いわばコンピュータの故郷です。そして、1970 年代にE.F.コッドのセット理論を基軸にしてリレーショナル・データベース(RDB)がマーケットに現れました。計算機科学におけるコッドの最大の貢献は、「データ設計を科学にした」
ことでしょう。彼の論文が公にされてから50年以上の年月が経過しました。その間、データ設計に先行する事業分析のやりかたが数々提示されてきました。本書で学ぶモデル作成技術は、数学基礎論を基底にした「論理的意味論」を通して解説しています。数学基礎論は、K.ゲーデルが証明した「不完全性定理」が起点になったものですが、その後、基礎論の研究が計算機科学への応用と技術的な抽象論に二極化されてきたことで、基本となる数学基礎論との関わりが希薄になっています。 第2 章で述べているモデル論の歴史については読み飛ばしても構いませんが、TMの技術を習得した後には必ず読んでください。構文論・意味論の重要性が分かるはずです。ちなみに、筆者が実地でモデル作成を指導するときには、構文論を徹底的に重視しています。というのは、構文論的に証明が可能であれば、意味論的にも成り立つからです。TMを「論理的意味論」と称しているのは、「論理」(無矛盾性)を重視しているがゆえです。
モデルは、現実的事態を写像した形式的構造です。そして、事業とコンピュータを結ぶ接合点なのです。システム・エンジニアの仕事が「事業をプログラミングする」ことであるのなら、形式的構造が無矛盾性を満たしていることは必須でしょう。 最後に、本書を書くきっかけを作ってくださった三津田治夫氏(ツークンフト・ワークス)、鷹見成一郎氏(技術評論社)、TMに関する拙著出版を長いあいだ要望してくれ ていた「TMの会」の会員たち(彼らは本書のために事例を提供してくれました)、付録事例集の原稿を整えてくださった木山靖史氏に感謝の意を表したい。そして、本書を書くために書斎に昼夜閉じこもっていた筆者を支援してくれた家族に感謝したい。 短い月日のうちに書き上げたので、数学基礎論やTMの技術について誤りがあるかもしれないので、読者諸氏の御叱正を乞いたい。
2022年 6月 |
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