2001年12月 2日 作成 反証と矛盾 >> 目次 (テーマごと)
2007年 2月 1日 補遺  



 推論とは、正しいと仮定された公理 (前提) を使って、べつの正しい定理を導く手続きである。
 推論は、以下の形式を使って記述される。

  前提 
  結論  

 推論の妥当性は、その結論を否定した文と、そのすべての前提の文が矛盾することを示せばよい
 言い換えれば、その集合のすべての メンバー が真になることを示せばよい。
 つまり、反証が存在しないことを示せばよい

 たとえば、以下の推論を例にする。

   B ⇒ ¬A
  ¬B ⇒ C  
   A ⇒ C

 この推論の妥当性は、以下の 3つの文から構成される集合の矛盾と同じことである。

 1. B ⇒ ¬A .........[ 前提 ]
 2. ¬B ⇒ C .........[ 前提 ]
 3. ¬ (A ⇒ C) ....[ 結論の否定 ]

 以下に推論過程を示す。

 1. B ⇒ ¬A .........(前提)
 2. ¬B ⇒ C .........(前提)
 3. ¬ (A ⇒ C) ....(結論の否定)
 4.   A ...................(3より)
 5.  ¬C .................(3より)

 ここで、以下の同値文を思い出してほしい。
 p ⇒ q ≡ ¬p ∨ q.

 したがって、¬ (A ⇒ C) ≡ ¬ (¬A ∨ C) ≡ ¬¬A ∧ ¬C ≡ A ∧ ¬C.
 これが、上述の 4. および 5. である (*1)。
 さらに、推論を進める。

 1. B ⇒ ¬A .........(前提)
 2. ¬B ⇒ C .........(前提)
 3. ¬ (A ⇒ C) ....(結論の否定)
 4.   A ...................(3より)
 5.  ¬C .................(3より)
 6. ¬B ¬A...........(1より) <----- B ⇒ ¬A ≡ ¬B ∨ ¬A

 さて、ここで、6. のなかに記述されている ¬A は 「矛盾」 となる (*2)。推論の過程において、すでに、4. のなかに、A が現れていて、6. のなかに、¬A が現れるということは、A ∧¬A が成立することになって、「矛盾」 となる。とすれば、6. のなかに記述されている ¬B を検証すればよい。
 さらに、推論を進める。

 1. B ⇒ ¬A .........(前提)
 2. ¬B ⇒ C .........(前提)
 3. ¬ (A ⇒ C) ....(結論の否定)
 4.   A ...................(3より)
 5.  ¬C .................(3より)
 6. ¬B ¬A .........(1より)
 7. ¬¬B C .........(2より) <----- ¬B ⇒ C ≡ ¬¬B ∨ C

 さて、ここで、推論の過程において、すでに、6. のなかに、¬B が現れていて、7. のなかに、¬¬B (≡ B) が現れるということは、¬B ∧ B が成立することになって、「矛盾」 となる

 以上から、1. と 2. と 3. のすべてが同時に 「真」 となることはないので、文の集合 { 1, 2, 3 } は矛盾している、ということを示している。したがって、当初の以下の文は正しい (無矛盾である)、ということになる。

   B ⇒ ¬A
  ¬B ⇒ C  
   A ⇒ C

(*1) (「かつ (∧)」 を使って構成される文は、べつべつの行に記述する)。
(*2) (「または (∨)」 を使って構成される文は、同じ行に記述する)。

 



[ 補遺 ] (2007年 2月 1日)

 本 エッセー で述べた証明法は、「背理法 (reductive absurdum、reductio ad absurdum)」 と云われている証明法である。帰謬法とも云われている。背理法とは、或る命題を証明するときに、その命題の 「結論が偽である」 と仮定して推論を進めたら、もとの命題の仮定に矛盾することになって、もとの命題の 「結論は真である」 とする証明法である。たとえば、以下を考えてみる。

 (1) 自然数 x, y の積 xy が奇数ならば、x と y は、ともに、奇数である。(命題)
 (2) x か y の少なくとも いっぽうが偶数ならば、積 xy は 2で割り切れるので、xy は偶数である。(推論)
 (3) xy が偶数であれば、はじめの命題の仮定に矛盾する。(矛盾)
   したがって、x と y は、ともに、奇数でなければならない。

 ちなみに、推論 (argument) とは、いくつかの命題から他の命題が導かれる (あるいは、含意される) ことを主張する。そして、前者を 「前提」 といい、後者を 「結論」 という。
 1つの推論は、前提が すべて 真なら結論も真であるときに限り、「有効である」 と云われる。たとえば、

    p ⇒ q
    p    
  ∴ q

 線 ── は、その上の前提から下の結論が導かれるという意味である。
 「∴」 は 「ゆえに」 と読む。

 以下の推論を 「三段論法」 という。

   p ⇒ q
   q ⇒ r   
 ∴ p ⇒ r




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