2006年 1月 1日 作成 | グラフ の応用 | >> 目次 (テーマ ごと) |
2010年 2月 1日 補遺 |
前回、ハッセ 図について述べた。そして、ハッセ 図を TM の作図法として使うことができるかどうかという点を検証した。結論としては、TM では、意味論的前提 (「event」 概念と 「resource」 概念) を導入したので、ハッセ 図を使わない。というのは、「event」 の並びは時系列であるが、「resource」 の並びは──たとえ、アルファベット 順 (あるいは、五十音順) に並べられるとしても──「event」 の並びとはちがう規準になるから。 そして、この点こそ、小生が TM を作ったときに悩んだ点なのである。というのは、モデル として──モデル の文法として──、記号論理学 (mathematical logic) を使うことができないということは、モデル の無矛盾性・完全性を実現できないのではないかと恐れたから。 TM では、関係 R を 「できごと (事態)」 として考えて、個体 (項) を entity として考えることにした。ただし、個体 (項) の認知として、「同意」 概念を導入して、認知番号を付与されている (designate) ことを必要十分条件とした。したがって、「できごと (事態)」 は、関係として記述されることもあれば──認知番号が付与されていなければ、そういうふうに記述されるが──、認知番号を付与されたら、個体 (entity) として記述される。ただし、いずれの事象であれ──「できごと (事態)」 が関係として記述されようが個体として記述されようが──、「できごと (事態)」 のなかで、演算 (個体の関与) を示すことにした。 「できごと (事態)」 を関係として記述する際に、最大に懸案となった点は、その関係が、いかにして、妥当であることを検証するかという点であった。TM では、関係として記述される「できごと (事態)」 は、まず、(「resource」 のあいだに) 2項関係として示される。その 2項関係が (「resource」 の) 構成表 (真理値表) にすぎないのか、それとも、その 2項関係が 3項態として 「できごと (事態)」 を言及している (refer to) のかという点を検証するために、「event」 の定義として、「日付 (取引日)」 を使うことにした。この考えかたは、ウィトゲンシュタイン 氏の 「物と関係は同一 レベル にある」 という主張を前提にして、さらに、パース 氏の形而上学を参考にしている。そして、「できごと (事態)」 のなかで演算する (個体が関与する) という文法を作った。 以上の考えかたが、TM の原案 (T字形 ER手法の原型) であった。そして、次の検討は、個体が正しい構成になっているかどうかという点を、セット 概念を使って周延を検証するという点であった。つまり、個体に対して導入された (管理過程の) 「管理の視点 (区分 コード)」 が妥当かどうかという点を検討した。その検討のために 「セット と サブセット」 概念を使った。TMD (TM Diagram、TM 図) では、サブセット を階-構成を使って記述するので、往々にして、「親子関係」 として誤解する人たちがいるが、セット と サブセット は、同値類なので、「親子関係」 ではない。すなわち、「セット と サブセット」 は、あくまで、「セット と メンバー」 を概念的な階-構成として記述しているにすぎない。言い換えれば、1つの セット のなかに、「仕切り」 を付設しているにすぎない。 いっぽう、1つの セット──たとえば、A とする──のなかで、メンバー のあいだに関係を記述するのは、「A の上の関係」 とされ、再帰的定義を使って、関係を記述する。すなわち、グラフ 的記述となる── G (u, v)。したがって、単純定義域の セット に対して、その メンバー のあいだに成立する関係を 「再帰表 (構成表)」 として記述する。たとえば、部品の セット に対して、その上の関係として、部品構成を記述するのであれば、TM では、(部品番号 (R)、部品番号 (R)) という 「組 オブジェクト」 として記述される。すなわち、(R) を使っていることから判断できるように、再帰表のなかに記述された2つの部品番号 (R) は、単純定義域の部品を指示している。そして、それらの 「並び」 が「親子関係」 を示している。
以上の記述からわかるように、同値類の サブセット (の階-構成) と、「A の上の関係」 である 「親子関係」 は、べつべつの概念である。混同されないように注意されたい。また、再帰表の 「組 オブジェクト」 は、並びが 「親子関係」 を示しているのであって、「親子関係 (親部品および子部品)」 は 「関係」 に対して付与された呼称である。したがって、指示と関係を混同しないように注意されたい。再帰表では、(部品番号 (R)、部品番号 (R)) と記述するのが正しい。 グラフ は、コンピュータ・サイエンス のあらゆる領域で使われている。たとえば、データ 通信回路や 「木 (tree)」 構造や ラベル 付き グラフ (遷移図) など。それらは、本論述の テーマ から逸れるので、ここでは述べないが、システム・エンジニア であれば、グラフ の基礎を学習しなければならない。 |
[ 補遺 ] (2010年 2月 1日)
今振り返ってみて、本 エッセー を綴った理由が私にはわからない、、、本 エッセー の結論として綴っている点は、「離散数学」 の基礎を学習してください、ということなのですが、TM に対して、あちこちで 「的外れな」 批評 (非難?) をされていることに ウンザリ して、TM の考えかたを把握するためには、「離散数学」 (あるいは、数学基礎論) を学習してください、と忠言したかったのかもしれない。 TM は、かつて、「大幅な」 変更を 2回辿ってきました。1回目の変更では、「T字形 ER手法」 から TM に生まれ変わり──意味論が増補されて──、2回目の変更では、TM の体系が書き換えられました──構文論が見直されました。現時点での体系は、本 ホームページ の トップページ で 「TM の バージョン」 の リンク のなかで示されている TM1.1 の体系です。 意味論を増補したとき──すなわち、「T字形 ER手法」 から TM に生まれ変わったとき──、カルナップ 氏が示した 「L-真、F-真」 概念を導入しました。そして、L-真 を導入したので、TM の文法を見直して、「関係」 として 「関数」 を使うようしました──ちなみに、「T字形 ER手法」 では、「関係」 として 「関数」 を使うことに躊躇 (ちゅうちょ) していて、関係 aRb において──すなわち、R (a, b) において── R を 「リレーション」 と云わないで、意図的に、「リレーションシップ」 と云っていました。 意味論を増補して、L-真 を導入したので、R (a, b) の 「無矛盾性」 を強く意識して、「関係」 として 「関数」 を使うように変更しました。というのは、TM の文法を見直したときに、(「ツォルン の補題」 で示されている) 「全順序、半順序」 を導入できることに気づいて──すなわち、entity の並びにおいて、「全順序」 としての 「event」 と、「半順序」 としての 「resource」 というふうに切断できることに気づいて──、関係文法を 「関数」 的に構成しました [ その体系が TM1.1 です ]。そのために、TM では、「関係」 を 「リレーション」 と云うようにしました。ただ、関係文法で問題になった点が、「event-対-resource」 の関係です──この点は、本 ホームページ の他の ページ で述べているので、ここでは割愛します。この問題が本 エッセー で述べている 「指示と言及」 の問題です。T字形 ER手法も TM も、entity を 「合意された認知」 のなかで実体主義的に構成している、と思って間違いはない。 関係文法 (構文論) を見直したとき、TM の技術を 「離散数学」 「数学基礎論」 の観点から再検討しました。そして、1点を除いて──すなわち、「event-対-resource」 の関係を除いて──、TM の技術は、数学の技術を使うように再体系化されました。正確に謂えば、「全順序、半順序」 を導入した時期は、2009年であって、本 エッセー が綴られた 2006年 (2005年) ではないのですが、「論理 データベース 論考」 を出版した時点 (2000年) で数学的技術を検討していて、「集合」 と 「関数 (関係)」 を学習していました。ただ、この時点では、いまだ、「関係」 として 「関数」 を使うことを渋っていました──というのは、意味論上、「合意された認知」 という概念を 「T字形 ER手法」 で使っていて、「集合」 を 「関係」 のなかの変更として扱うことを拒否していたので [ その 「迷い」 が 「論理 データベース 論考」 の 「あとがき」 で記されています ]。ただし、「T字形 ER手法」 の関係文法を (1点 [ event-対-resource ] を除いて、) 「関数」 の観点で説明できることは否定できない。 T字形 ER手法の関係文法は、「論理 データベース 論考」 を執筆した時点で、「関数」 を使って ほぼ説明できることは明らかになっていたのですが、「関数」 を躊躇 (ためら) らずに使うことができるようになるには、次の拙著 「データベース 設計論 (通称、『赤本』)」 まで待たなければならなかった。「赤本」 は、上述したように、意味論を検討して、L-真・F-真 を導入した著作です。この時点で、懸案になっていた 「合意された認知」 が 「真」 概念と同列で扱えることに気づいて、「合意された認知 → 構成された L-真 → 験証された F-真」 という 「モデル の正当化条件」 を組めました。この正当化条件が構成できたので、L-真を実現する技術として ロジック を使う──関係文法として 「関数」 を使う──ことにしました。この時点で、関係主義的文法を導入しました。 そして、2009年 2月に出版した拙著 「モデル への いざない」 で、再度、モデル の構成要件を検討して、「関係」 として 「関数」 を使うために、「event と resource」 を 「閉包、特性関数、外点」 で説明しました。この時点で TM1.0 の体系が整った、と云っていいでしょう。しかし、「いざない」 を出版しあとで、「ツォルン の補題」 を使えば、「event と resource」 を、もっと簡単に説明できることに気づいて、「全順序、半順序」 を軸にした体系に変更した次第です。これが TM1.1 です。 TM の関係文法を 「関数」 の観点で見直したときに ハッキリ した点は、TMD (TM Diagram) が有向 グラフ を 「線と箱」 で書いたにすぎないという点でした──ただし、本 エッセー で述べているように、ハッセ 図を使っていない。 TMD は有向 グラフ を 「線と箱」 で描いた構成図なので、TMD を把握するためには 「離散数学」 (および、数学基礎論) を学習してください、というのが本 エッセー の趣旨です。TM は、一言でいえば、「実体主義的個体に対して関係主義的文法を適用」 した体系である、と要約できるでしょう。 |
<< もどる | ベーシックス | すすむ >> | |
▼ データベースの基礎知識 |