2007年 9月16日 「理論編-1 モデル と 3つの世界」 を読む >> 目次に もどる
2012年 8月16日 補遺  


 本節では、以下の 2点を まとめています。

  (1) ポパー 氏の モデル 観
  (2) カルナップ 氏の 意味関係分析

 ポパー 氏は、以下の 「3つの世界」 の関係を分析しました。

  (1) 第一世界としての物理的世界 (物的状態の世界 [ 事実的対象 ])
  (2) 第二世界としての心的世界 (心的状態の世界 [ 認識主体 ])
  (3) 第三世界としての 「知性が把握しうる世界」 (客観的意味の世界 [ モデル ])

 それらの世界に関する──そして、それらの世界のあいだに成立する関係に関する──かれの分析は、かれの著作を直に読んで下さい。私が、この 「3つの世界」 のあいだに成立する関係として争点にしたのは、「第二世界 (認識主体)」 の関与の ありかた です。

 実地の システム 作りでは、過去から今に至るまで、オノマシオロジー 的接近法 [ 事実 → モデル ] を継続して使ってきて、「第一世界 → 第二世界 → 第三世界」 (現実的事態を システム・エンジニア が観て、それを理解して モデル を作ること) という waterfall 型の手順が 「一般に承認されて」 きました。そして、そういう やりかた では、現実的事態に対する システム・エンジニア の認識力・理解力が モデル の 「品質」 を左右するということです。

 私が 「赤本」 のなかで主張したかった点は、モデル 作りにおいて──少なくとも、「事実を 『正確に』 記述する」 作業では──、システム・エンジニア の 「視点 (認知力・理解力)」──あるいは、もっと強い言いかたをすれば、「私智」──を除去することでした。すなわち、第二世界を除去することでした。というのは、第一世界の事業過程 (購買過程・生産過程・販売過程・労務過程・財務過程) に対して、すでに、管理過程 (購買管理・生産管理・販売管理・労務管理・財務管理) が 「制度」 として導入されています。すなわち、管理過程は、事業過程に対して、第三世界の役割を担っています。とすれば、この第三世界 (管理過程) のなかで使われている 「情報 (『意味』 の伝達)」 に対して、「意味」 の有効性を判断できる 「構成」 を与えて、「事業過程と管理過程」 のあいだの相互作用を検討すれば良いということです。言い換えれば、セマシオロジー 的接近法 [ モデル → 事実 ] を導入したほうが良い、ということです。この点を訴えるために、「赤本」 を執筆した次第です。そして、論理的意味論の観点から、TM (T字形 ER手法) を再検討するために、「赤本」 を執筆した次第です。

 第二世界を除去するために、私は、カルナップ 氏の論理的意味論を援用しました。カルナップ 氏は、「意味関係」 を以下の 2つに類別しました。

  (1) 表現関係 (第二世界と第三世界のあいだの関係)
  (2) 指示関係 (第三世界と第一世界のあいだの関係)

 私が 「赤本」 で狙った テーマ は、(第二世界と第三世界の) 「表現関係」 を除去して──その変わりに、ロジック (論理学) を前提にした 「構文論」 的な構成文法を用意して──、「管理過程と事業過程」 のあいだにある 「指示関係」 を重視するという アプローチ (セマシオロジー 的接近法) でした。 □

 



[ 補遺 ] (2012年 8月16日)

 「赤本」 を執筆した理由は、TM (T字形 ER法の改良版) の 「意味論」 を明らかにする事でした。即ち、TM は、数学基礎論 (モデル 論) に遵って、「論理的意味論」 (の置き所) を TM の中で明らかにする事でした。

 「論理的意味論」 を導入するために、「赤本」 では、カルナップ 氏の 「真」 概念──導出的な L-真、事実的な F-真──を導入しました。そして、その 「真」 概念を導入するために、ポパー 氏の 「3つの世界 (の関係)」 を伏線にしました。勿論、数学基礎論の技術を使えば 「論理的意味論」 になるのですが、そういう モデル 観が普及していない 「事業分析」 の領域の中に、正統な・正当な モデル 観──「構文論が先で、意味論が後」 という事──を導入するためには、構文論と意味論を言い表す 「真」 概念 [ モデル が正しいという事を証明できる概念 ] が必要だったという次第です。この時に、論点になるのが、数学基礎論では 「記号 (変数)」 として扱うけれど、実際の事業では自然言語として使われている 「語-言語」 そのものの 「意味」 (合意された語彙の正当化条件) と F-真 (真理条件) との関係です──この点については、後日、論じます。





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