2008年 7月 1日 | 「技術編-7 複合的な認知番号」 を読む | >> 目次に もどる |
2014年 1月23日 補遺 |
「個体」 を指示する コード (すなわち、コード 体系のなかで定義されている管理番号) のことを、私は、いままで、「identifier」 とか 「認知番号」 とか 「個体指示子」 というふうに言ってきましたが、最近では、「個体指定子 (entity-setter)」 という言いかたを使っています。「個体指定子 (entity-setter)」 という言いかたは、デイヴィドソン 氏の著作 「真理と解釈」 のなかで目にしたので、借用しました。今後、「個体指定子」 を主に使いますが、「認知番号」 「個体指示子」 も併用すると思います。
さて、「個体指定子」 は、原則として、atomic な項目であって、ほかの 「個体指定子」 を使って構成されていないこと。言い換えれば、「個体指定子」 は、個体を指示するための管理番号として、複合構成であってはいけない、ということです。
(1) ほかの (2つ以上の) 「個体指定子」 を合成して、新たな 「個体指定子」 を構成する。
(2) の現象は、次節 「技術編-8 認知番号の代用 (index-key)」 で説明します。 従業員 { 部門 コード、従業員番号、従業員名称、・・・ }. 下線で示した 「マスター・キー (あるいは、ユニーク・キー)」 は、1970年代、構造的 プログラミング で使われた やりかた ですが、「個体と関係」 (あるいは、関係 モデル) という観点からみれば、従業員名称は、部門 コード に対して、なんら、functional dependency はないでしょう。したがって、もし、関係 モデル を前提にするのであれば、以下の構成としなければならないでしょうね。 従業員 { 従業員番号、従業員名称、・・・、部門 コード (R) }. 構文論上、この構成は妥当なのですが、意味論上、部門 コード で null が起こるかもしれない──たとえば、部門に帰属していない 「専務取締役」 とか、「部門に配属されていない」 従業員であれば、部門 コード は null になります。この構成を前提にするのであれば、プログラム は、null に対応するために、4値 ロジック を使わなければならないでしょうね。4値 ロジック を使うのであれば、この構成は妥当です。 私 (TM) は 「F-真」 を重視しているので (すなわち、「真理条件 (規約 T)」 を重視しているので)、「充足」 概念を前提にして、2値 ロジック を使っています。したがって、null を認めない。しかも、TM では、「個体」 を 「個体指定子」 に従って定立するので、以下の構成になります。
従業員 { 従業員番号、従業員名称、・・・ }. そして、それらを前提にして、以下を 「構成すれば」、「真理条件」 上、新しい 「意味」 を言及することになります。 { 部門 コード (R)、従業員番号 (R) }. すなわち、「対の公理」 を前提にすれば、ふたつの集合──ここでは、部門と従業員ですが──をもとにして、それらが構成する ひとつの集合──ここでは、{ 部門 コード (R)、従業員番号 (R) } ──の存在を仮定することができます。そして、構成された集合が、「真理条件」 に照らして、ひとつの 「事態」──ここでは、「配属」──を 「指示する」 ことになるでしょう [ したがって、{ 部門 コード (R)、従業員番号 (R) } は、「F-真」 です ]。この構成法の妥当性は、後日 述べます [ 「技術編-16」 で述べます ]。 以上の説明でわかるように、ふたつ以上の 「個体指定子」 を使って、ひとつの (新たな) 「個体指定子」 を構成すれば、「個体指定子」 が指示する 「個体」 が ちがう、ということです。 では、「個体指定子」 は、「無意味な連続番号」 を使うべきか、と言えば、私は、かならずしも、同意しない。というのは、たとえば、自然数 (1, 2, ・・・, n) と 「個体」 を対応しても、もし、「基数 (cardinal number)」 として考えるのであれば、データ 件数を示しているにすぎないので、「意味」 はないし、「序数 (ordinal number)」 として考えるのであれば、「入社順 (個体の発生順)」 を示すので、それなりの 「意味」 はあるけれど、たとえば、ほかの例として、「商品番号」 に対して、自然数を 「1-対-1」 に対応する 「意味」 はないでしょう [ 商品の 「発生順」 を付与しなければならない 「意味」 はないでしょう ]。 「個体指定子」 は、基本的に、その値が指示関係上、なんらかの 「意味 (指示規則)」 をもつように付値されるべきでしょうね。したがって、その値は、ほかの個体との関係のなかで付与されるのではなくて、個体そのもの-の指示のなかで付与されるべきでしょう。そして、その値のなかには、アルゴリズム を指図するような フラグ (flag) を導入してはいけない──たとえば、「個体指定子」 の値のなかで、しかじかの桁の値が、かくかくの文字 (あるいは、文字列) であれば、これこれの アルゴリズム を適用しなさい、というような指図を導入してはいけない。というのは、「個体指定子」 は、あくまで、「個体」 を指示する シンボル であって、「個体」 を プログラム のなかで どのように使うか は、指示とは べつの配慮だから。 「個体指定子」 の付値は非常に難しい作業ですが、付値の基本規則は、それぞれの 「個体 (集合)」 のなかで、メンバー を 「並べる」 という規則です。 □ |
[ 補遺 ] (2014年 1月23日)
先ず注意しておきたいのは、「個体指定子} は (情報科学で云う) いわゆる 一意性を示す 「ユニーク・キー (index-key)」 ではない、という事です。モデル は、あくまで記号列の関係を構成する技術です。「個体指定子」 は、ユーザ 言語を対象にして (言語を文字列の集合と考えた場合に) ユーザ が管理対象 (「主題」) として与えた コード である、という事です。ちなみに、ユーザ が使っている区分コード は、「主題」 として構成された集合を切断する (形式的には、部分集合を示す) コード です。
「関係」 は、「直積」 として示されます──すなわち、{ 主題、条件、・・・、条件n }。そして、それぞれの集合 (セット) は、距離 (空間・時間の中で認識される距離) の中で 「関係」 としてそれぞれの座標を占めています。それらの集合を一意に アクセス するために、index-key を付与することは、モデル とは べつの論点です (TM では、TMD を制作した後に、「キー (index-key) の定義表」 を作成します)。当然ながら、「主題」 の他に 「条件」 も index-key として定義される事も起こります。
「主題」 の付値は、ユーザ がすでにおこなっています。そして、前回 述べたように、「いかなる記号も、それに対する 「意味」 が保証されることなしに、新たに固有名 (記号) として導入されることはないこと (モデル を制作中は、システム・エンジニア が勝手に付値できる事ではない)」。
|
<< もどる | HOME | すすむ >> | |
目次にもどる |