2001年 5月27日 「入社日」 は従業員の性質か。 >> 目次 (作成日順)
  ● QUESTION   「入社日」 は、「従業員」 entity に帰属する性質か。
  ▼ ANSWER   ちがう。
2006年 7月 1日 補遺  




 「入社日」 は、「入社」 entity (「event」) を生成するための性質である。
 ただし、コート゛ 体系のなかに、「入社 コート゛」 あるいは 「入社番号」 が記述されていないので、「入社」 entity を生成することができないから、とりあえず、「近似値」 の entity である 「従業員」 entity (「resource」) のなかに仮置きしているに過ぎない。或る性質が或る entity に帰属するかどうか、という点は、(言語使用の観点から言えば)以下の判断規準を使えばよい。

アトリヒ゛ュート の名称=「entity 名称」+ 一般的な 「性質」
ANSI の規準書は、これを 「entity. generic」 というふうに扱っている。

具体例 (「entity 名称. 性質」 の判断規準)
名 称 日 付 数 量
従業員名称=従業員. 名称
顧客名称=顧客. 名称
製品名称=製品. 名称
受注日=受注. 日
出荷日=出荷. 日
契約日=契約. 日
受注数=受注. 数
出荷数=出荷. 数
返品数=返品. 数
「entity 名称. 性質」 の判断規準のなかの 「entity 名称」 は、述語論理の流派では、「domain (定義域)」 と呼ばれている。


[ 補遺 ] (2006年 7月 1日)

 上述した判断規準は、科学的な規則ではなくて、あくまで、1つの目安にすぎない。

 ANSI の基準書は、そもそも、IRM (Information Resource Management) を目的にした 「命名規約 (naming-standard)」 として提示された。ANSI 基準書では、以下の 3つの組成が提示されている。

 (1) Entity
 (2) Generic
 (3) Role

 ANSI の この基準書は、ページ 数が多いので、たぶん、ふつうのひとたち--IRM やデータ管理を専門にしていないひとたち--は読まないと思う (ちなみに、私は読みました)。私は、いま、この文を拙宅で綴っていて、ANSI 基準書を てもとに置いていないので--(拙宅から遠く離れた) 事務所のほうに置いてあるので--、公表された年代を調べることができないのですが、たぶん、1980年代の半ばから終わり頃のあいだ だったと記憶しています。出版年度も古いので、ふつうのひとなら、いまさら、ANSI 基準書を わざわざ入手して読まないでしょうね (笑)。

 さて、「性質が (entity に) 帰属している」 という判断は、非常に難しい。というのは、「帰属」 という概念を どのように解釈するか という点がからんでいるから。たとえば、関数従属性 (個体を指示する 1つの primary-key に対して、「1 対 1」 に対応する属性値) を前提にすれば、入社日は、1人の従業員に対して、1回しか起こらないので、従業員の データ として記述することもできます。コッド 関係 モデルは、そういう考えかたをしています。

 ただ、いっぽうで、「帰属」 という概念を 「そのもの-の」 というふうに考えれば、「そのもの-の」 の対として 「に-対して」 という概念を考えることができます。とすれば、「入社日」 は、従業員と会社の関係のなかで--「入社」 という行為のなかで--起こる述語だと判断することもできます。したがって、「入社日」 は、従業員に帰属する データ ではないと判断できます。しかし、「入社日」 が従業員の性質ではないとすれば、いったい、どの主体のなかで記述すべきか という やっかいな争点が出てきます。
 個体は、かならず、個体指示子 (あるいは、流派によっては、primary-key) を付与されていなければならないという前提であれば、「入社日」 が帰属するはずの 「入社」 は、ふつう、「入社番号」 を付与されていないので、主体として認知されない。

 TM (T字形 ER手法) では、「入社日」 を従業員の性質としないで、「みなし概念」 のなかで、「みなし entity」 として、「従業員. 入社」 を作ります。




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