2001年 6月24日 作成 数学基礎論 (全般): 中級編 >> 目次 (作成日順)
2005年12月16日 更新  


モテ゛ル (modeling) を作って、曖昧な点を 「これが私のやりかただ」 と誤魔化すことはできても、数学の証明は誤魔化しがない。飛躍のない着実な手順しかない。
したがって、入門編に記載した文献を理解しないかぎりは、中級編の文献を読んではいけない。



 

 ▼ 全般

 ● 数の概念 (改版)、高木貞治、岩波書店
     [ 数学基礎論を扱っていないが、「数」 の概念を (複素数は除いて) 根本から論理的に解析してある。]

 ● 数学基礎論へのいざない、倉田令二郎、河合文化教育研究所

 ● 入門数学基礎論、倉田令二郎、河合文化教育研究所

 ● 数の体系と超準 モテ゛ル、田中一之 著、裳華房

 ● 数理論理学 (コンヒ゜ュータ 数学 シリース゛ 3)、林 晋、コロナ 社
  [ 目次: NJ、NK および シーケント 推論 ]

 ● 記号論理学の原理、ライヘンハ゛ッハ 著、石本 新 訳、大修館書店
  [ 論理実証主義の観点から綴られている。第 7章および第 8章は読なくてもよい。]

 ● 記号論理学 (上・下)、ケ゛オルク・クラウス 著、門上秀叡 訳、青木書店
  [「関係の論理」 の解説が詳しい。弁証法も扱われているが、弁証法は読み飛ばしてよい。]

 ● 集合論、フ゛ルハ゛キ 著、東京図書
  [「数学原論」 のなかに収録されている。]

 ● 公理的集合論、倉田令二郎・篠田寿一、河合文化教育研究所

 ● 帰納的関数、廣瀬 健、共立出版

 ● 帰納的関数と述語、篠田寿一、河合文化教育研究所

 

[ 読みかた ] (2005年12月16日)

 中級編としましたが、数学を専門にしている人たちから観れば、(上述した書物のなかで、「数の体系と超準 モテ゛ル」、「公理的集合論」、「帰納的関数」 および 「帰納的関数と述語」 を除いて、) 「入門書」 とされるかもしれないですね。ただ、数学を専門にしていない人たちにとっては、上述した書物は、いずれも、「中級」 程度になると思います--少なくとも、ぼくには そうでした。

 数学を専門にしていない人たちに対して、まず、注意したい点は、前回 (39ヘ゜ーシ゛) 示した 「入門書」 を飛び越して、いきなり、今回示した書物を読まないで下さいという点です。クラウス 氏の書物と ライヘンハ゛ッハ 氏の書物は、ひょっとしたら、いきなり読んで理解できるかもしれないのですが--それでも、ライヘンハ゛ッハ 氏の 「自然言語の解析 (第 7章と第 8章)」 は、いきなり読んで理解できないでしょうが--、それ以外の書物は、基礎学力がなければ読めないでしょう。
 上述した書物の読みかた (読み進める順序) は、以下のようにして下さい。

 (1) まず、クラウス 氏と ライヘンハ゛ッハ 氏を読んで下さい。
    クラウス 氏の書物は、絶版なので、図書館で借りて下さい。ライヘンハ゛ッハ 氏の書物は、市販で入手できます。
    この 2冊を理解できるまで、読み込んで下さい。

 (2) クラウス 氏と ライヘンハ゛ッハ 氏を理解できたら、次に、以下を読んで下さい。
    - 「数学基礎論へのいざない」(倉田令二郎)
    - 「数理論理学 (コンヒ゜ュータ 数学 シリース゛ 3)」 (林 晋)
    - 「数の概念 (改版)」 (高木貞治) [ 絶版かもしれない。]

 倉田令二郎氏の書物では、「数学基礎論へのいざない」 と 「入門数学基礎論」 は、学力程度が違うので注意して下さい。「いざない」 のほうが、入門書です。数学を専門にしていない人たちは、以上の書物を読んだら、それ以上の学習を進めなくても良いでしょう。

 (3) もし、余力があるのなら、以下を読んで下さい。

    - 「数の体系と超準 モテ゛ル」 (田中一之)
    - 「入門数学基礎論」 (倉田令二郎)
    - 「公理的集合論」 (倉田令二郎・篠田寿一)
    - 「帰納的関数」 (廣瀬 健)
    - 「帰納的関数と述語」 (篠田寿一)
    - 「集合論」 (フ゛ルハ゛キ)

 ちなみに、ぼくは、(3) の書物を、いずれも、途中で投げ出しています (苦笑)。(3) は、数学を専攻している人たち向けの書物です。ただ、ぼくは、いま、「数の体系と超準 モテ゛ル」 を、再度、読書計画のなかに入れようとしています。テ゛ータ 設計を専門にしている ぼくが そういう書物を読んで、どういうふうに役立つのかと問われたら返答に困るのですが、ぼくは、「論理 テ゛ータヘ゛ース 論考」 を執筆したあとで、数学 (集合・写像・関係・ク゛ラフ などの概念) に対して興味を抱いています。ウ゛ァレリー 氏 (詩人) は、数学を愛好していたという例もあるので、(数学を技術として考えたら、詩人に比べて、数学に対して近い ホ゜シ゛ション にいる) テ゛ータヘ゛ース・エンシ゛ニア が数学に恋しても良いでしょう (笑)--もっとも、「不幸な恋」 に終わるかもしれないのですが、、、。

 




 

 ▼ 数学史 [ 数学基礎論に関する歴史を読めば良い ]

 ● タレス の遺産、アラク゛ラン・ランヘ゛ック 共著、三宅克哉 訳、シュフ゜リンカ゛ー・フェアラーク東京
  [ 第一部と第二部から構成されていて、第二部を読めばよい。]

 ● 数学の哲学、ケルナー 著、山本 新 訳、公論社

 ● 数学と哲学との間、村田 全 著、玉川大学出版部

 ● 数学史、フ゛ルハ゛キ 著、村田 全・清水達雄 共訳、東京図書

 

[ 読みかた ] (2005年12月16日)

 「数学の哲学」 (ケルナー) は、「超」 お薦めです。ぜひとも、読んで下さい。
 この書物は、いわゆる 「素朴集合論のハ゜ラト゛ックス」 を起点にして、ハ゜ラト゛ックス を回避するために、公理的集合論が形成される過程を--ツェルメロ 氏が提示した技術的 ソリューション を検討することは大切なことなのですが、ZF の公理系 (および、BG の公理系) を技術的観点から検討しているのではなくて--論理主義・形式主義・直観主義という 「数学観」 を検討しています。
 数学基礎論 (現代集合論) の技術を知らないで、この書物のみを読んで、数学基礎論の考えかたを 「わかったつもり」 になられても困るのですが、数学基礎論の基本技術を学習して、この書物を読めば、益する所が大きいでしょう。

 ぼくは、ウィトケ゛ンシュタイン 氏の哲学を信奉しているので、ウィトケ゛ンシュタイン 氏の全集 (大修館版) を読んでいますし、ラッセル 氏 (論理主義) のいくつかの書物や ヒルヘ゛ルト 氏 (形式主義) の書物 (「数学の基礎」および 「記号論理学の基礎」) や ケ゛ーテ゛ル 氏の論文 (完全性定理と不完全性定理) を読んでいますが、フ゛ラウワー 氏 (直観主義) の論文を読んでいません。哲学の専門書によれば、ウィトケ゛ンシュタイン 氏の考えかたは、フ゛ラウワー 氏に近いそうです。

 ちなみに、フ゛ラウワー 氏が講演したとき、会場には、ウィトケ゛ンシュタイン 氏と ケ゛ーテ゛ル 氏がいて、フ゛ラウワー 氏の講演を聴いて、ウィトケ゛ンシュタイン 氏は 「哲学探究」 の起点になる哲学思想を着想したそうですし、ケ゛ーテ゛ル 氏は 「不完全性定理」 を着想したそうです。その講演が催された夜は、人類史上--少なくとも、哲学と数学では--、転換点になった日ですね。
 ぼくは、ツェルメロ 氏の論文を読んでいないのですが、数学の専門書によれば、ツェルメロ 氏が提示した 「選択公理の証明」 は、哲学的 ソリューション であって、純粋に数学的な ソリューション ではないので、数学者たちのなかには、「選択公理」 を認めない人たちもいるそうです。ただ、いちぶの数学領域を除いて、現代数学は、「選択公理」 を前提にしていると思って良いそうです。

 数学基礎論の基本技術を習得している人たちが ケルナー 氏の書物を読めば、「みずからの考えを進める」 良質な材料を得ることができるでしょう。ケルナー 氏の書物を読んだら、次に、「タレス の遺産」 の第 2部 (数学基礎論の歴史) を読んで下さい。「タレス の遺産」 では、セット 概念と クラス 概念が、的確に まとめられています。
 「数学の哲学」 と 「タレス の遺産」 を読めば、数学基礎論の歴史・基本概念を学習できるので、ほかの書物を読まなくても良いでしょう。「数学と哲学との間」 (村田 全) も お薦めの書物ですが、数学の哲学に関して、よほど、興味がなければ読破できないと思います--ぼくは、ちゃんと読破しました。

 「タレス の遺産」 の第 2部を読破した時点で、クワイン 氏の書物を読み始めても良いかもしれない (99ヘ゜ーシ゛に記載した 「哲学事典」 と、151ヘ゜ーシ゛に記載した著作)。クワイン 氏は、ラッセル 氏が提示した タイフ゜ 理論を単純化して、ML の公理系を提示しました。また、クワイン 氏は、セット 概念と クラス 概念との相違を外して、セット と クラス を同じに考えたほうが良いのではないかという提案もしています。クワイン 氏を読み進めれば、チョムスキー 氏とのあいだに交わされた論争を検討しなければならないのですが、ぼくは、そこまで、進もうとはしなかった。「読書案内」 に記載された蔵書を観れば、ぼくが、チョムスキー 氏の著作を一冊も読んでいないことに 読者は気づいたでしょう。ぼくは、どうしてか (for some reasons) チョムスキー を読もうと思わないのです、、、。
 チョムスキー 氏の著作を ぼくは直に読んでいないのですが、アルコ゛リス゛ム に関する専門書を読んでいて、かれの考えかたが概説されていて、かれの仕事が形式言語の研究に与えた多大な影響 (成句構造) をぼくは知っていますが、どうしても、「色のない緑色の理念は狂暴に眠る」 という文が許される構成を ぼくは聴納できない。(注)

(注) この文は、チョムスキー 氏の "Three models for the description of language" (1956) に記載されているそうです。
   ぼくが読んだ コーフェーシ゛ 著・西田英郎 訳 「アルコ゛リス゛ム」 (1971年) のなかで引用されていました。

 

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