2001年 9月30日 作成 「空集合」 と仮言命題 >> 目次 (作成日順)
2006年12月 1日 補遺  



 論理定項の 「ならば (⇒)」 を使って作られた命題を 「仮言命題 (あるいは、内包命題)」 という。
 「ならば (⇒)」 は以下の 2つの論理定項を使って記述できる。

 (1) 「かつ (∧)」
 (2) 「でない (¬)」

 つまり、「p ⇒ q」 は 「¬(p ∧ ¬q)」 として記述できる。
 とすれば、「¬(p ∧ ¬q)」 は、「¬p ∨ q」 として記述できる (*1)。

 仮言命題のことを内包命題と呼ぶ こともあるが、「内包」 とは、集合では、「x ∈ Aならば x ∈ B」となるとき、A は B の部分集合であるという。つまり、「p ⇒ q」 は、(集合の) 「p ∈ q」 と同値である (*2)。

 「p ⇒ q」 が 「p ∈ q」 と同値である ということは、言い換えれば、「真」 なる メンバー の集合のなかには 「偽」 なる メンバー がない、ということを意味している。

 以下 に、仮言命題 (p ⇒ q) の真理値表を示す。(T は True、F は False を示す。)



p ⇒ q


 「真」 なる メンバー の集合のなかには 「偽」 なる メンバー がないということは、「p = T, q = F」 が 「(p ⇒ q) = F」 となる理由である。

 とすれば、「x ∈ A ならば x ∈ B」 の A として 「空集合 (φ)」 を代入すれば、「x ∈ φ ならば x ∈ B」 という文を作ることができる。とすれば、以下の論理が成立する。

 (1) x ∈ φ は 「偽」 である。
 (2) x ∈ B は、「真」 のときもあれば、「偽」 のときもある。
 (3) とすれば、「x ∈ φ ならば x ∈ B」 の真理値は、「F、T」 あるいは 「F、F」 となる。
 (4) 「F、T」 あるいは 「F、F」 は (真理値表から判断すれば 、) 常に 「真」 である。
 (5) したがって、空集合は任意の部分集合である、という扱いは正しいことになる。

 以上 のようにして、空集合の扱いは、論理 (仮言命題) の真偽の定義と一致している

 (*1) と (*2): 以下の 2つの論理式は、数学の証明のなかで、多々、使われるので、覚えておいたほうがよい。

 (1) p ⇒ q ≡ ¬p ∨ q.
 (2) p ⇒ q ≡ p ∈ q.

 



[ 補遺 ] (2006年12月 1日)

 空集合 (null set) は、便宜上、有限集合と考えたほうが、数学的構造を記述するには役立つことを、前回、述べたし、数学的構造を 「現実の世界」 に適用したときに、空集合の 「意味」 は 「多義」 になることも述べた。すなわち、空集合を 「一者集合 (存在)」 として考えたとき、「undefined」 と 「unknown」 の 2つの 「意味」 を示す。

 空集合を演算対象にすれば、2値論理 (「真」 および 「偽」 の 2つの値を使う論理) を超えて、3値論理 (「真」、「偽」 および 「null」) あるいは 4値論理 (「真」、「偽」、「unknown」 および 「undefined」) を使わなければならない。ただ、null を演算対象にしたときに、もし、3値論理を使えば、以下の点に注意しなければならない。

 (1) null の論理否定 (¬ N) は、null である。
 (2) true かつ null は、null である。(false かつ null は、false である。)
 (3) true または null は、true である。 (false または null は、null である。)

 したがって、データ 演算 (集合論演算) のなかで--3値論理を前提にして--、null を温存して、たとえば、SQL 言語を使って、「NOT IN」 句や 「NOT EXIST」 句を使ってはいけない。




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