2001年10月15日 作成 仮言命題 >> 目次 (作成日順)
2006年12月16日 補遺  



 「p⇒q」 は 「¬p∨q」 と同値である。その理由を以下に述べる。

 (1) 「p⇒q」 は 「¬(p ∧¬q)」 と同値である。たとえば、以下を考える。
      p を 「天気がよい」 とする。
      q を 「 野球をする」 とする。

 (2) p⇒q は、「天気が良ければ、野球をする」 になる。
    ¬(p∧¬q) は、「『天気が良ければ、野球をしない』 ことはない」 となる。

 (3) 「p⇒ q」 の真理値表と 「¬(p∧¬q)」 の真理値表を以下に示す。



p⇒qp∧¬q¬(p∧¬q)


 以上の真理値表からわかるように、「p⇒q」 の真理値と 「¬(p∧¬p)」 の真理値は同じである。
 とすれば、「¬(p∧¬q)」 は、ド・モルガン の法則 (*1) と 「双対の原理」 (*2) から 「¬p∨q」 になる。
 とすれば、「p⇒q」 は 「¬p∨q」 と同値になる。□

(*1) ド・モルガン の法則とは、¬(p∧q) ≡ ¬p∨¬q。
(*2) 双対は、¬(p∨q) ≡ ¬p∧¬q。

  論理法則は、∨ (または) と ∧ (かつ) について双対である (置換できる)。
  つまり、「¬(p∧q) ≡ ¬p∨¬q」 であれば、その双対 「¬(p∨q) ≡ ¬p∧¬q」 も論理法則になる。
  一般的に言えば、次の法則が成立する。

   ¬{f(∧, ∨, p, ¬p, q, ¬q,...} ≡ f (∨, ∧, ¬p, p, ¬q, q,...).

  なお、「p⇒q」 の真理値表において、p が F (偽) のとき、「p⇒q」 が T (真) になるというのは、日常言語の感性から言えば、妙に感じるけれど--前提が間違っているのに結果が正しい、というのは奇妙に感じるけれど--、「前提がいい加減なら、なんでも成立する」 と覚えておけばよい。

 



[ 補遺 ] (2006年12月16日)

 前回 (「『空集合』 と仮言命題」のなかで)、「p⇒q ≡ p ∈ q」 であることを述べました。
 今回、仮言命題が、「論理的否定 (...でない) と選言 (または)」 の組として変換できることを述べました (p⇒q ≡ ¬p∨q)。これらの変換 (「p⇒q ≡ p ∈ q」 と 「p⇒q ≡ ¬p∨q」) は、「証明」 では、多々、使われますので、これらの変換が成立する理由を知っていれば、数学基礎論の書物を読むときに役立つでしょう。

 ちなみに、文中、「p が F (偽) のとき、『p⇒q』 が T (真) になるというのは、日常言語の感性から言えば、妙に感じるけれど--前提が間違っているのに結果が正しい、というのは奇妙に感じるけれど--、『前提がいい加減なら、なんでも成立する』 と覚えておけばよい」 というふうに ザッと言ってしまいましたが、以下に示すように、この真理値表 [(p、q、p⇒q) ≡ (F、T、T)] を作成してみれば、演算手続き上の導出にすぎないことがわかるでしょう。
 「p⇒q ≡ ¬(p∧¬q)」 ですから、「p⇒qの真理値表」 と 「¬(p∧¬q)の真理値表」 も同値です。

    p⇒qの真理値表              ¬(p∧¬q)の真理値表
    ┌──┬──┬───┐       ┌──┬──┬──────────┐
    │ p │ q │p⇒q│       │ p │ q │¬(p ∧ ¬ q)│
    ├──┼──┼───┤       ├──┼──┼──────────┤
    │ T │ T │ T  │       │ T │ T │T T F F T  │
    │ T │ F │ F  │       │ T │ F │F T T T F  │
    │ F │ T │ T  │       │ F │ T │T F F F T  │
    │ F │ F │ T  │       │ F │ F │T F F T F  │
    └──┴──┴───┘       └──┴──┴──────────┘
                   1  3  7 2 6 5 4

 「¬(p∧¬q)の真理値表」 の下に示した数字 (1、2、3、4、5、6、7) の手順で真偽 (T と F) を確認してみて下さい。すなわち、

 (1) p = F.
 (2) p = F.
 (3) q = T.
 (4) q = T.
 (5) ¬p = T.
 (6) q ∧ ¬p = F ∧ T = F.
 (7) ¬(q ∧ ¬p) = ¬ F = T.




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