2001年11月15日 作成 | 英語: 日本紹介のために | >> 目次 (作成日順) |
2006年 5月 1日 更新 |
外国人から日本のことについて質問されて、日本人として、日本のことを、ほとんど知らないために、返事に窮した経験のある人々は多いと思う。自らの国のことを他の国の人々に伝達できないなら、英語を習得して国際人になるということは空言になる。自らの identity があってはじめて go international できる。 外国人が集まる party に参加するなら、日本人として、日本のことを伝達できる話題は、2つや3つほどを事前に仕入れておいたほうがいい。 なお、文中の★は「お薦め」の意味である。 |
▼ 以下に記載する書物は、日本の文化や伝統を扱っている。
● JAPAN an Illustrated Encyclopedia, KODANSHA
● 対訳 日本事典, 講談社 インターナショナル
● 日本紹介のための 英語会話辞典、荒磯芳行、Jean Moore 編、旺文社、
● 英語で日本の生活を説明する、石橋和代、ヘ゛レ 出版
● 日本文化を英語で説明する辞典、本名信行、ヘ゛イツ・ホッファ 編、有斐閣
● トレント゛ 英語 日本図解辞典, 小学館
● 日本を知る101章、下中 弘 編、平凡社
● 日本の心:文化伝統と現代、新日本製鐵株式会社広報企画室 編、丸善
● 日本のすべて、木村尚三郎 監修、三菱自動車工業株式会社人事部編、三省堂
● ニッホ゜ン 英語で丸かじり、M・フ゛ライス、N イトウ、NEC クリエイティフ゛
● JAPAN AS IT IS:日本 タテヨコ、GAKKEN
● しきたり、国際日本語研究所 編、アフ゜リコット |
[ 読みかた ] (2006年 5月 1日)
私が日本文化の書物を読め始めた理由は、「『日本語的発想と英語的発想』 の類似点・相違点」 を調べるためではなかった。いまでこそ、その点を調べることは、私の興味になっているが、当初、日本文化の書物を読み始めた理由は、もっと現実的な理由であった。私が、たびたび、米国に出張していた頃、米国人から日本のことを訊かれて、ちゃんと応えることができなかったという現実的な理由であった。つまり、私は、日本人として、日本のことを、ほとんど、知らなかったし、(そして、日本のことを知らないが故に、) 日本の文化を ちゃんと説明することができなかった。日本で生まれて、日本で育って、日本という国家のなかで育った私は、「日本」 という渦中にいるが故に、生活のなかで体験した事態や接してきた事物を 「当然のこと」 として感知していたので、それらを知らない人たちに適切に説明できなかった。いっぽうで、私は、日本が欧米化されてきたなかで、欧米で生まれて日本に移植された概念を知っていた。 当時 (20数年前)、コンヒ゜ュータ・ソフトウェア を作る技術では、日本は、欧米に比べて、後れていたので--いまでも、後れているのかもしれないけれど--、欧米の アフ゜リケーション・ハ゜ッケーシ゛ を輸入し日本化して日本に導入するという 「日米の technological gap」 を活用した仕事に私は従事していた。日本では、いまだ、知られていない欧米の概念・技術を、たとえ、日本のなかで、私が知っていると誇っても、欧米では、「物真似」 とみなされて相手にされない。喩えてみれば、私が すでに知っていることを、ほかのひとが私に語って--しかも、そのひとの語っていることが私の知っていることに比べて粗末であれば--私は相手の言うことなど耳を傾けないのと同じことである。私は、欧米のことを知っていて、逆に、日本のことを語ることのできない日本人という奇怪な状態に陥っていたことを気づいた。私は、「identity」 という大それたことを言うつもりはないのであって、もっと身近に言って、party に参加しても、相手と会話 (コミュニケーション) が成立しない気まずい状態が起こった。私は、日本文化として、「芸者」 や 「相撲」 などを列挙するつもりはないのであって、「sho^sha (総合商社)」 や 「lifetime employment」 や 「KEIRETSU (系列)」 や 「KAIZEN (改善)」 ということを、米国人が (日本人の会社員たる) 私に訊いてきても、私は、それらを適切に説明できなかった。日本人として日本のことを改めて学習しなければならないことを私は痛感した。 たしか、その頃に、「日本の ヒ゛シ゛ネス 慣行と米国の ヒ゛シ゛ネス 作法」 の キ゛ャッフ゜ を描いた 「Gungho」 という映画を観た記憶があるが-文化の違いは、映画として、やや誇張して テ゛フォルメ されてはいたが--、いまでも (日本では、欧米化が進んだとはいえ、) ああいう 「行き違い」 は起こりうるのではないか。その映画は、「Gungho」 という標題が示すように、最終場面では、「協力しよう」 という (「文化の壁」 を超えた) ハッヒ゜ーエント゛ になっているのだが、もし、現実に、ああいう事態が起こったら、「文化の壁」 は、多数の協議を熱心に・冷静に重ねなければ、超えることはできないのではないか。 前掲した書物のなかでは、日本文化の英訳を、もし、「本気で」 学習したいのであれば、以下の 3冊を お薦めします。
(1) JAPAN an Illustrated Encyclopedia, KODANSHA ただし、「JAPAN an Illustrated Encyclopedia」 は大冊で、文が すべて 英文なので、「本気で」 学習するひとでなければ読めないでしょうね。 もし、欧米人との party に参加するときに、話題を事前に仕入れる 「軽い」 目的であれば、前掲した書物のなかから 数冊を てもとに置いていれば良いでしょう。たとえば、以下を お薦めします。
(1) 日本紹介のための 英語会話辞典、旺文社 |
▼ 以下に記載する書物は、日本人の慣習を表現する 「英訳しにくい」 日本語を扱っている。
● NTC's Dictionary of Japan's Business Code Words, Boye Lakayette De Mente、NTC
● 日本人語、三菱商事広報室、東洋経済新報社
● 日本人の秘密、長谷川勝行、ひらがな タイムス゛ 別冊
● STRANGE BUT TRUE (A TRUE-LIFE JAPANESE READER), Tom Gally、KODANSHA INTERNATIONAL |
[ 読みかた ] (2006年 5月 1日)
「NTC's Dictionary of Japan's Business Code Words」 は、「超」 お薦めの書物です。この書物は、いまでも、市販されているのかしら。もし、市販されているのであれば、ぜひとも、入手して下さい。われわれ日本人が、生活や仕事のなかで、さして、こだわらないまま使っている ことば のなかで、外国人から観れば、日本人の考えかたを示している ことば を選んで、欧米の考えかたと対比しながら、(ことば が示している) 日本人の考えかたを丁寧に述べています。「平等」 や 「足をひっぱる」 などの説明を読んでいて、外国人 (Boye Lakayette De Mente 氏) から指摘されて、私は、改めて、日本人として、「なるほど」 と思い当たる点も多かった。 |
▼ 以下に記載する書物は、日本の経済 (や政治など) を扱っている。
● TIME でみる 日本の素顔、TIME 編集部 著、竹村日出夫 編訳、洋販出版
● 「ニュース゛ウィーク」 で読む日本経済、沢田 博 編訳、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス
● ワシントンホ゜スト が書いた 「日本」--「Japan」 クリッヒ゜ンク゛、東郷茂彦 編訳、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス
● JETRO Nippon 2001, JETRO
● JAPAN ALMANAC 2002、朝日新聞社
● JAPAN Economic Almanac 2001、The Nikkei Weekly、日本経済新聞社
● 全図解 日本のしくみ [ 政治・経済・司法 編 ]、
● 全図解 日本のしくみ [ 生活文化・社会・医療・娯楽・スホ゜ーツ 編 ]、
● 数字で読む日本人、溝江昌吾 著、シ゛ャイルス゛ーマリー 訳、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス
● JAPAN Geographical Perspectives on an Island Nation、帝国書院 |
[ 読みかた ] (2006年 5月 1日)
[ Japan Almanac ]
前掲した書物のなかで almanac は 2001年/2002年の 「年度」 が記されていますが、本 エッセー を認めた年月日が 2001年11月15日だったので、当時の白書なのであって、当然ながら、つねに、最新年度の almanac を入手するようにして下さい。
(1) JETRO こういう類 (almanac) の英文は、「英借文」 の手本ではなくて、日本の経済について英語で語るときに、てもとにあれば役立つ資料でしょうね。資料は、つねに、最新の テ゛ータ であればあるほど現実の正確な状態を伝えますので、the Internet が使える環境であれば、ウェッフ゛ 上で、最新の テ゛ータ を入手するようにしていれば良いでしょう。 日本のことを英語で伝えるいっぽうで、欧米人が日本を どのように観ているかを知っておいたほうが良いでしょう。そうすれば、みずからの伝えようとしている日本像と日本を外 (そと) から観ている人たちの抱いている日本像が、どの程度に ス゛レ ているのか を認識できるので、日本のことを正確に伝えるには どうすれば良いかを考える てだて になるでしょう。TIME 誌・NewsWeek 誌・WashingtonPost 紙 は、一級の雑誌・新聞なので、日本に関して、それ相応の テ゛ータ を調べて記事を掲載していますから、噂話のような憶測の報道ではないので、一読の価値はあるでしょう。そして、いっぽうで、それらの第一級の報道機関と比べて、外国の一般大衆 (ordinary people) は、日本のことを ほとんど 知らない。だから、海外に出張する日本人は、みずからの国を正確に伝えなければならないでしょうね。
私は、かつて、通訳者の アシスタント として、日本人たちの海外 ツアー (訪米) に同行したことがあるのですが、ツアー に参加していた或る日本人が米国人と会話していたときに、「We Japanese are unique...」 という言いかたをしていたのを聴いて、苦笑いしたと同時に、冷や汗が流れました。およそ、国家であれば、unique でない国家はない。日本のみが unique である訳はない。かれの英語を聴いていて、日本経済を担っていると自負している企業人の 「日本を考え思い伝える力」 が、この程度なのかと愕然としたのを いまでも記憶しています。 「JAPAN Geographical Perspectives on an Island Nation」 (帝国書院) は、中学校・高等学校で使っている 「地理の教科書」 風な書物です。こういう書物を、まず、読んで、日本国土の全貌を把握するのは、中学校・高等学校で学習した地理の知識と相まって、効果的・効率的だと思うのですが、全文が英文なので--ヘ゜ーシ゛数が少ないと言っても--日英の通訳者になるという目的があるか、あるいは、「外国人になったつもりで、日本のことを英語で学習する」 という強烈な熱意でもなければ、なかなか、読まないでしょうね。ちなみに、私は、3 分の 1 ほどしか読んでいない (読んでいる途中で、退屈になって、離れました)。 「全図解 日本のしくみ」 (講談社) [ 「政治・経済・司法 編」 と 「生活文化・社会・医療・娯楽・スホ゜ーツ 編」 ] は、お薦めの書物です。日本語版 (日本実業出版社) が さきに出版されて、それから英訳本 (講談社) が出版されました。日本語版のみを読んでも、日本の様々な制度・慣習・事物・事象に関して、おおまかな・まとまった知識を得られる簡便な書物です。1つの テーマ に関して、記述量は、1ヘ゜ーシ゛ あるいは 2ヘ゜ーシ゛ で、かつ、図解が挿入されているので、詳細な説明を期待したら、期待はずれになるかもしれないのですが、ふだんの会話のなかで語る情報としたら、事足りるでしょう。テーマ としては、たとえば、米の流通のしくみ、国勢調査のしくみ、宅配 サーヒ゛ス のしくみ、超高層 ヒ゛ル 工事のしくみ、テレヒ゛ 局のしくみ、CATV のしくみ、視聴率のしくみ、国会のしくみ、証人喚問のしくみ、中央官庁のしくみ、自衛隊のしくみ、証券取引所のしくみ、裁判のしくみ、検察庁のしくみ、警察庁のしくみ、警視庁のしくみ、著作権保護のしくみ、フ゜ロ・ホ゛クシンク゛ 界のしくみ、相撲界のしくみ、死刑執行のしくみ、CD-ROM のしくみ、ハ゛ーコート゛ のしくみ、介護保険のしくみ、PKO のしくみ、衆議院選のしくみ、インサイタ゛ー 取引規制のしくみ、など。こういう テーマ を英会話のなかで語ったり英作文のなかで綴ることができたら、情報の 「give and get」 が円滑になるでしょう。たとえば、日本の裁判制度は しかじかだが、米国では どういう制度なのか ということを米国人に訊けば--実は、書物を調べれば、米国の裁判制度を事前に知ることができるのですが (笑)--、もし、会話であれば、相手がしゃべっているあいだ、英語を聞き取る (listening) 練習になるでしょう。ちなみに、そういう知識がないままに、米国人が 「陪審員制度」 について語ることを--しかも、ふつうに しゃべる速度で--聴きながら理解しようとしても、日本で英会話程度の学習しかしていない日本人は聞き取ることはできないでしょう。英語を学習する前に、まず、事物・事象に関する知識がなければならない。とすれば、英会話の文型練習ばかりに労力を費やすのは無駄であって、「英語で知識を得る」 ということを目的にして英語を学習したほうが良いでしょうね。 「数字で読む日本人」 は、余興で読んで下さい。 |
▼ 以下に記載する書物は、日本の歴史を扱っている。
● ハ゛イリンカ゛ル 日本史年表、英文日本大事典 編、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス
● 英語で読む日本史、英文日本大事典 編、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス
● 英語で話す 「仏教」、高田佳人 著、シ゛ェームス・M・ハ゛ータ゛マン 訳、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス |
[ 読みかた ] (2006年 5月 1日)
「日本史を英語で学習する」 ということは、英語の専門家か、あるいは、よほどの 英語 マニア しかいないでしょうね。私も、日本史を英語で通読した訳じゃない。前掲の 3冊は、参考書として所蔵しているにすぎない。たまに、拾い読みする程度である。 「対訳 英語で読む日本史」 (講談社) は、本 ヘ゜ーシ゛ の最初に記載した英語版百科事典 「Japan: An Illustrated Encyclopedia」 のなかから、日本史関係の記述を抜粋して 1つにまとめた書物です。表紙には、11 Experts Reflect on the Past と記されていて、11名の研究家 (そのなかで 2人は日本人ですが、ほかの人たちは日本人ではない) が執筆しています。新書本を 一回り大きくした寸法で、全体で 220ヘ゜ーシ゛ の量ですが、後半に (167ヘ゜ーシ゛ 以後に) 添付されている日本史年表・日英語索引を除いたら 160数ヘ゜ーシ゛ のなかで、古代 (縄文時代) から平成時代までを通観して、見開きの対訳本なので、英文のみでは、80数ヘ゜ーシ゛ で日本史を コンハ゜クト に通観した書物です。 日本史そのもの-の知識は、本 ホームヘ゜ーシ゛ の読書案内 「日本史」 で記載した書物を読んだほうが、詳細な知識を得られるし、仏教そのもの-の知識も、読書案内 「宗教」 のなかに記載した書物を読んだほうが専門的な知識を得ることができますが、この対訳日本史は、「11人の超一流 シ゛ャハ゜ノロシ゛スト たちが英語で書き下ろした日本全史。外国人の目から見た日本史は どういうものか」 (本書の book-jacket に綴られている宣伝文の一部を そのまま引用) を知りたかったので、私は--すでに、或る程度の日本史知識を習得していますが--拾い読みしている次第です。「超一流 シ゛ャハ゜ノロシ゛スト たち」 が綴っているので、まとめかたが巧みです (英語という言語の性質もあるのかしら)。たとえば、江戸時代を、John W. Hall 氏 (エール 大学教授) が執筆なさっていらっしゃるのですが、「黒船」 に関して、以下のような巧みなまとめになっています。 It was Abe, however, who had to face crisis created by the arrival of U.S. Commodore Matthew Perry in 1853. Abe did two things that signaled the end of Tokugawa power. By soliciting all daimyo^, including tozama, for opinion on how to handle the American request for opening of Japanese ports, he abandoned the shogunal prerogative of determining foregin policy unilaterally. By encouraging daimyo^ to build up their own coastal defenses, he weakened the sho^gun's power to control their military strength. With the end of Japan's isolation and the advance of millitary technology, the shogunate lost its ability to assert national authority, ultimately bringing the Tokugawa regime to an end. つまり、阿部正弘が下した 2つの決断が徳川政権の終わりを告げたということです。その 2つの決断とは、
(1) 外交は、従来、幕府の一存だったのだが、その特権を放棄して、大名の意見を諮問した。
そのために、鎖国が終わり、大名たちの軍事技術が進歩して、幕府は全国支配の能力を喪ったとのことです。 After 1800, many Japanese were attracted to an emerging school of National Learning (Kokugaku). This interest in Japanese tradition took on both nationalistic and religious dimensions, especially in the work of Hirata Atsutane, who called for a return to Shinto^ tradition. Revival of the ideological features of Shinto^ provided many Japanese with a sense of cultural security amidst the emerging sense of crisis. It laid the basis for the powerful conservative reaction to the foreign threat under the slogan Revere the Emperor, Expel the Barbarians (sonno^ jo^i).
日本人の日本史専門家と、外国人の日本史専門家が、同じ資料を分析して、それぞれの意見を述べる際、私は、それぞれの 「視点」 に対して興味を覚えます。「対訳 英語で読む日本史」 を拾い読みして感じた的確な・コンハ゜クト な まとめかたを、私は、家永三郎氏著 「新日本史」 (昭和 22年初版、冨山房) を読んだときにも感じました。 |
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