2002年 4月30日 作成 英文日記 >> 目次 (作成日順)
2007年 6月16日 補遺  


 
 TH さん、きょうは、「英文日記」 についてお話しましょう。

 以前、英語の力を養うためには英語の辞書を読めばよい、ということを お話しました。
 辞書を読み続ければ、データ (input data) が多量に蓄積されてきます。データ が多量に蓄積されてくれば、いずれ、有意味な アウトプット (情報) として形成され表出されることは自然な行為でしょう。あるいは、逆に、アウトプット を生成するために データ を仕込むこともあるでしょう。

 アウトプット を意識しても、英語を使う頻度が多くない人々もいるでしょう。
 英語を使うために英語を学習する、というのが自然な学習の態度ですが、「思考力を養うために」 英語を学習する、という点も強調しておいてもいいでしょうね。ただ、「思考力を養うために」 英語を学習するということは、英語を使うということに比べて具体性に乏しいので、どうやって、英語の運用力を鍛えればよいのか、という点が曖昧です。

 そこで、「英文日記」 を綴ることを お薦めします。
 日記というのは、その日その日の見聞や心情を書き留めることが目的ですが、読者が自分自身である、という点が特徴です。日記は、他人に見せる文章ではないので、日記には、きまった書きかたはないでしょうね。日記を綴ることによって得られる大きな利点は以下の 2つです。

 (1) 備忘録 (記録的日記)
 (2) 物事をまとめる能力や観察力を養う (感想・意見の反省的日記)。

 以上の 2点のいずれの傾向が強いかという点は、個人の好み (性格) が反映するでしょうが、(小生の経験から言えば) 年齢を加えるにつれて、感想・意見の日記から備忘録の日記へと色彩が移っていくようです。

 日記 (日本語の日記) を綴っても、「三日坊主」 で終わる人々も多いそうです。というのは、まいにち、日記を綴っていると、中身が同じような繰り返しになって、終いには、綴る ネタ が尽きてしまうので、「三日坊主」 になる人々が多いそうです。

 日本語の日記ですら、そうですから、ましてや、英語の日記となれば、(「三日坊主」 どころか) 綴ることが おっくうになるでしょうね。でも、英語を使う頻度が、ほとんどない状況のなかで、英語の運用力を養うには--実際に英語を綴る癖を身につけるには--、英文日記が一番に手っ取り早い手段です。ただし、英文日記を綴るためには、以下の 2点を切り離して扱ったほうがいいでしょう。

 (1) まいにち繰り返している行為 (たとえば、「起床」 とか 「就寝」 など) は略語を使って綴る。
 (2) 感想・意見は、できるかぎり、ちゃんとした文章の形にする。

 たとえば、(1) は以下のように綴ればよいでしょう。

 「起床」 ---> Waked at 6:30.
 「就寝」 ---> Bed at 23:30.
 「シャワーを浴びて、髭を剃る」 ---> Showered and shaved.
 「朝食、昼食、夕食」 ---> Breakfast at 7:30/ Lunch at 12:00/ Supper at 19:30.
 (商談の昼食なら、luncheon (with 誰々) at 12:30)
 「飲み会」 ---> dined and wined out with 誰々 at 店
 「(会社で)仕事」 ---> from 10:00 'til 17:30, (was) at office
 「A 社での会議のために新宿に出向いた」 ---> (Was) out for a meeting at A社 in 新宿
 などなど

 ちなみに、私 (佐藤正美) は英文日記を 10年弱ほど綴ってきましたが、日本の地名や日本人名を日本語で綴っています。日本の地名・日本人名を英文で綴っても、英語の運用能力を養うことには、全然、ならないでしょうね--ただし、欧米の地名や外国人の名前は、辞典を調べて、正確に綴るようにしています。

 英文の運用能力を養うためには、(2) を目的にすれば良いでしょう。ただし、英文日記を初めて綴るひとが感想・意見の文章を、いきなり、ちゃんとした英文の形で綴ることはできないでしょうね。そこで、英文日記を綴り始めるには、以下のようにすれば良いと思います。

 (1) 一日のなかで一番の印象の強かった出来事 (および、感想・意見) を記録する。
 (2) その出来事 (および、感想・意見) は 「日本語」 で綴る。
 (3) 「日本語」 は、できるかぎり、「1つの主語と 1つの述語」 の単文にして綴る。
 (4) 「日本語」 を英訳する。ただし、英訳は完全な翻訳にするのではない。
 (5) 日本語で綴られている それぞれの単文に近い文例を以下の辞書から収集する。
    「新編 英和活用大辞典」 (あるいは、和英辞典)

 たとえば、以下のように綴ればよいでしょう。

 「----April 27, 2002 (Sat.)----
  Waked at 9:30. Showered and shaved. Breakfast at 10:00....
  ゴールデン・ウィーク の初日である。
  家族で、富山に帰省する。
  ------------------------------------------------------------
 (基本例文)
  ゴールデン・ウィーク the "Golden Week"
  (from April 27 through May 6, both of which are public holidays).
  家族で in a family
  帰省する go back to my home town

 こういうふうにして、一年ほど、例文を収集していれば、おのずから、英語の運用力は高まります。それから、次第に、英語の文章を綴るようにしていけばよいでしょう。そうすれば--それほど多大な努力を費やす訳ではないので--、英文日記を綴ることが苦痛にはならないでしょう。そして、英文日記を綴るようになって一年後に、当初の英文日記を読み返してみて下さい。一年前の英文が拙いことを感じるでしょうが、逆に言えば、英語の運用能力が増したことを示しているのです。

 さあ、TH さん、英文日記を綴ってみましょう。 □

 



[ 読みかた ] (2007年 6月16日)

 本 エッセー で述べた 和文英文併用法は、私が、英文日記を綴りはじめた頃の やりかた です。本 エッセー を綴った頃 (2002年) 、私は、すでに、この やりかた を卒業して、日本語を併用しないで、英文のみを綴っていました。いま (2007年) も、英文日記を綴っていますので、もう、かれこれ、15年くらい、英文日記を、まいにち、綴っています。英文日記に慣れてしまったので、もし、日記を日本語で綴るようにしたら、私は、たぶん、まいにち、日記を綴ることが おっくうになって、日記を綴るのを止めるかもしれない。英文日記は、私の生活のなかで、確実に習慣になっています。
 英文日記を綴る長所は、英語学習の観点から判断すれば、以下の 2点かもしれないですね。

 (1) 生活単語を習得する。
 (2) 意見・感想など 込み入った思想を綴る。

 いずれも、日本人が英語学習で苦手としている点でしょう。というのは、英字新聞を読んでいるひとが、乾電池 (単三とか単四) や蛍光灯などの生活単語を英語で言えないのを私は観てきましたし--もっとも、生活単語は、海外で生活しないかぎり、習得する意味はないと言われたら、そうかもしれないのですが--、少なくとも、英文日記を綴るということは、「みずからの気持ち・意見を文として的確に組み立てる」 知力を養うことには役立つでしょうね。

 生活単語では、「料理」 に関する語いを私は苦手です。日本語でも、私は 「料理」 に関する語いが少ないので、英語となれば、なおさらのことです。日本に生まれて日本で育ったひとが、日本語の語いとして、知識になっていない ことがら を英語で言うのは無理でしょう。逆に言えば、英語で話題を豊富にしたいなら、日本語で豊富な話題をもっていなければならないということでしょうね。

 学校で英語を習って--中学校・高校で、すでに、6年も費やして学習してきたにもかかわらず--、「英語がしゃべれない」 からといって、英会話と称して、「挨拶」 などの文型を再学習する やりかた を私は疑問視しています。もし、英語ができないというなら、学校で習った英語が ちゃんと習得されていないということであって、学校で習った英語文法を ちゃんと習得していないひとが、「学校で習った英語は役立たない」 などと言ってもお笑いぐさにすぎないでしょう。そういうひとが、英会話に夢中になっても、英語ができるようになるはずがない。

 英語の文法 (冠詞、数の概念、時制、前置詞、仮定法) を確実に学習して、英文日記を綴りながら、みずからの意見を英語で彫刻する稽古をくり返して下さい。




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  佐藤正美の問わず語り