2002年 6月30日 作成 | 集合と排中律 | >> 目次 (作成日順) |
2007年 9月 1日 補遺 |
カントール の提示した集合論は 「新しい数学」 の起点になったと同時に 「パラドックス」 を内包していたことがわかって、「数学の基礎」 を検討する以下の 3つの流れが形成された。
(1) 論理主義 (ラッセル)
ラッセル は、ホワイトヘッド との共著 「数学原理 (Principia Mathematica)」 のなかで、「数学 = 論理学 + 集合論」 であること--論理学が数学の基礎になること--を証明しようとしたが、論理学以外の公理 (「無限の公理」 や 「還元の公理」) を導入せざるを得なかった。 ヒルベルト は、集合論と全数学の無矛盾性の絶対的証明をするために、以下の 3点を立脚点にした 「ヒルベルト・プログラム」 を提示した。
(1) 形式化 (公理や定理を記号化して操作する第一階述語論理)
ゲーデル は、ヒルベルト のやりかたが不可能であることを証明した。ゲーデル は 「タイプ 理論」 を継承している。 「歴史の瞬間」 ということを考えてみると、ウィトゲンシュタイン と ゲーデル は、(ウィーンで 開催された) ブラウワー の講演会に出席していて--おたがい、言葉を交わさなかったが--、ブラウワー の講演を聴いて、二人とも、歴史に遺る着想を得ている。ウィトゲンシュタイン は、(前期の代表作である 「論理哲学論考」 を著して、「哲学を葬り去った」 と思って哲学から離れていたが) ブラウワー の講演を聴いて、哲学に戻って、「新たな一歩」 を踏み出すことになった。ゲーデル は、ブラウワー の講演を聴いて、「不完全性定理」 の着想を得ている。 さて、二人の天才に刺激を与えた ブラウワー は、「直観主義」 を提唱して、以下を論点にしていた。
(1) 「無限集合」 を前提にして、排中律 (A ∨ ¬A) の 「無制限な」 使用は疑わしい。 つまり、ブラウワー は「¬¬P ⇒ P」 を拒否した。
[ 参考 ]
ちなみに、ウィトゲンシュタイン の考えかたが ブラウワー の考えかたに近いことを ラッセル は危惧していた--ラッセル は、ウィトゲンシュタイン を天才として認め、論理学と哲学において、自らの後継者と見做していた。
たしかに、ウィトゲンシュタイン の遺稿 「数学の基礎」 を読めば、ブラウワー に近い考えかたをしていることを感じるけれど、ウィトゲンシュタイン は 「基本的な数学的直観」 対しては共鳴していないし、彼の講義 (1939年) のなかでは、「直観主義はすべて ナンセンス である」 と言っている。
[ 補筆 ]
ちなみに、小生は、今、ボイル (数学者) が使っていた 「effectif」 という概念が気になっていて、それを研究したいと思っている。
もし、「緑色でない」 という概念を 「全ての他の色の」 外延として解釈すれば、排中律は成立する。 しかし、「緑色である」 という性質を除いた全ての性質として解釈すれば、「緑色でない モノ」 の中には、「透明である」 とか 「人間」 とか 「自然数」 などの概念も含まれてしまい外延を形成しない。 つまり、否定概念として、以下の 2つは峻別されなければならない。
(1) 事物の一定の範囲での否定概念
集合論は、「概念の抽象化」 に役立つ手法であるが、或る集合の事物に関して、その事物のみに帰属する 「本質的な性質」 (内的特徴) と 「非本質的な性質」 (外的特徴) を区別することができない。 |
[ 補遺 ] (2007年 9月 1日)
カントール と デデキント が集合論を作りました。ただ、その集合論には、パラドックスが出ました。パラドックス を回避するために、ツェルメロ が公理的集合論を作りました。ツェルメロ の作った公理系のなかの 1つの公理を フレンケル が補強したので、この公理系は (ふたりの頭文字を使って、) ZF の公理系とよばれています。 カントール の素朴集合論が パラドックス を出した理由は、「あまりにも巨大な集合」 を考えたからであって、パラドックス を回避するには、集合の範囲を限定すればよいというのが、ZF の公理系の前提になっています。すなわち、{ x ∈ a | f (x) } として、a という部分集合を前提にするという考えかたです。この公理を 「分出公理 (あるいは、部分集合の公理)」 と云います。こうして作られる集合を 「セット」 と云います。しかし、「分出公理」 からは、超限集合 (無限集合) も集合族も導くことができないので、ほかの公理として、「無限集合の公理」をはじめとして いくつかの公理を用意しました。ZF の公理系は、以下の 3点が特徴点です。
(1) 等号 (=) をふくむ第一階述語論理を使って形式化されている。 そして、それらの公理を前提にして作られる集合として、以下が 「集合」 として認められています。
(1) 無限集合 (自然数全体を集合とする) 無制限な集合のなかで、排中律を使うことが ナンセンス であることは、本 エッセー の本文のなかで--「緑色の モノ」 という例で--示しました。いっぽう、「範囲を限定すれば」 、排中律を使うことができます。 ちなみに、推論のやりかた は、数々 ありますが、それらのなかでも、自然推論 (natural deduction) が多く使われているようです。自然推論は、ゲンツェン が形式化した推論法です。自然推論には、以下の 2つの やりかた があります。
(1) NJ (ドイツ 語式に 「エヌ・ヨット」 と発音します) NJ は排中律を使わない推論法で、NK は排中律を使う推論法です。 |
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