2002年11月16日 作成 英語の文例集 (その 2) >> 目次 (作成日順)
2007年12月16日 補遺  


 
 TH さん、きょうは、英語の文例集を、再度、扱ってみましょう。
 前回の 「英語の文例集 (その 1)」 (130 ページ) では、日常言語を対象としていたので、今回は、専門領域の英文を対象にしましょう。

 日常言語を対象とした例文を記載した辞書類は多いのですが、専門領域の英文 (豊富な例文) を記載した辞書は、ほとんど、ない、というのが実態ですから、専門領域の英文を綴るためには 「お手本」 とする辞書がない、というのが、専門領域の英語を作文する際に--あるいは、専門領域の英語を習得する際に--遭遇する悩みです。

 専門領域の英語を習得するためには、まず、以下の文献を用意してください。

  (1) 英文で綴られた専門書
  (2) 英文で綴られた専門領域の辞典

 具体的にお話しするために、いま、僕のてもとにある以下の文献を例にして、英語の例文を集める やりかた を述べてみましょう。

   - "Information System Architecture: A System Developer's Primer", W.H. Inmon, PRENTICE-HALL, 1986.
   - "DICTIONARY OF COMPUTING (SECOND EDITION)", S.M.H. Collin, PETER COLLIN PUBLISHING, 1994.

 たとえば、(Entity-Relationship Model において、) relationship の英語の使いかた--専門領域のなかでの使いかた--がわからないとすれば、まず、英文の専門書を使って、「Index」 のなかから、relationship を探してください。

 Inmon 氏の著作のなかで、relationship を調べたら、以下の ページ に記載されています。

  16、23、27、38、51、54-55、58、61、77、81、109、184.

 それらの ページ を、順次、調べて、relationship の例文を集めれば良いでしょう。
 たとえば、「Index」 の最初に記述されていた 16 ページ には、以下のように記述されています。

 Relationship: The association between two entities. It may be 1 to 1, 1 to N, M to N, or nonexstent. It often carries a verbal description. It is described by arrows, which also indicate whether it is 1:n or m:n, as shown in Fig. 1.17. In this figure a customer may have n accounts, but no account is for more than a sigle customer. A part may have n suppliers, and a supplier may supply n parts.

 文献のなかに描かれている図を省略しましたが、上述の英文を読めば、relationship の定義がわかる。
 「Index」 のなかに記載されている relationship の全ての ページ を参照して例文を集めれば良いでしょう。
 そういうふうにして例文を集めれば、専門領域の 「私家版 和英辞典」 を編纂することができる。

 もっとも、そういうふうにして、数多くの専門書 (英文) のなかから例文を収集するということは、専門領域の和英辞典を編纂することを目的としていないかぎり、金輪際、やらないでしょうね(笑)。したがって、英文を綴る際に直ぐに例文 (英借文) を探すことができる用意さえしておけばよいでしょう。つまり、専門領域の英文の文献を、数冊、所蔵しておけば良い、ということです--数多くの英文文献を読みながら、「独自の Index」 を作成すれば効果的なのでしょうが、(英借文として使うまで、文献を読まなくで) 「ツンドク」 にしておいても良いでしょう。

 さらに、英語の辞書を使って、relationship を調べたら、「relational database」 の記述のなかで参照項目として以下のように記述されていました。

  relationship noun way in which two similar things are connected

 さて、この辞書は、専門用語の定義を簡単に調べるための 「簡約辞書」 ですから--緻密な定義をすることを目的としていないので--、(relationship を調べてみたけれど) 例文の収集として役に立たなかった。でも、[ relationship が relational のなかで参照項目として扱われているので ] 気になる点--さらなる調査をしなければならない点--を 1つ認識することができました。調査点というのは、relational (あるいは、relation) と relationship との違いです。
 実は、(relational database の生みの親である) コッド 博士の論文のなかで、relation と relationship の違いが言及されています。

 さあ、専門領域の英借文を綴る コツ がわかりましたか。
 ちなみに、「データ 解析に関する FAQ」 のなかに記載されている 「[ 特集連載 ] T字形 ER手法の英訳」 には、以上のようにして集めた英文を 「英借文」 として使っている文章がいくつかあります--(和英辞典を使いながら一文ずつ英訳して、それらの英作文を継ぎ接ぎにすれば、文章の流れが 「ぎくしゃく」 するのですが) 読んでいて、いきなり、達意の英文が出てくれば 「英借文」 だと思って間違いないでしょうね(笑)。

 



[ 読みかた ] (2007年12月16日)

 例文の収集法を具体的に記述しているので、取り立てて、補遺はいらないでしょう。

 私は、若い頃 (30歳代と40歳代のはじめ)、たびたび、海外に出張して、英語で データベース の技術を学習しなければならなかったので--当時、日本では、いまだ、リレーショナル・データベース が導入されていなかった時代だったので、リレーショナル・データベース を日本に導入するために、リレーショナル・データベース の技術は、米国に往って学習しなければならなかったので--、英語の専門書を読んだり、専門技術を英文で綴る機会が多かった。

 専門技術を英文で綴る際、市販の和英辞典は、ほとんど、役に立たなかった。そのために、私がとった やりかた は、本 エッセー で述べた やりかた でした。データベース に関する英文を綴るとき、特に、恩師 (Eric Vesely 氏) の著作と、データベース・プロダクト [ DATACOM/DB ] の マニュアル (英文) は、ずいぶんと参照しました。それらの書物のほかにも、当時、Martin J. 氏の著作を いくつか、英文を綴るための参照項として使いましたし、最近では、Date C.J. 氏の著作も参照項として使っています。

 私は、当時 (30歳代のはじめ)、データベース [ DATACOM/DB ] に関して、1,200 ページ に及ぶ英文 マニュアル (非売品) を作成しました--そのほとんどの ページ は、プロダクト の マニュアル から 「切り張り」 したにすぎないのですが、いちぶ (「monitor and tune-up」)、私が、みずから、綴った文も挿入されていました。この自作 マニュアル は、その データベース・プロダクト に付随する四世代言語を作っていた エンジニア たち (ニュージャージ州) や 香港の販売代理店から注文をもらい、「身内」 のあいだでは、或る程度の評価を得ました。その マニュアル は、使命を終えて、いま、拙宅の本棚の隅で、埃をかぶって、ひっそりと佇 (たたず) んでいます。

 データベース・プロダクト のほかにも、アプリケーション・パッケージ (固定資産) と四世代言語を担当したとき--私が、はじめて、米国に出張したとき、そして、それは、私が、はじめて、海外に出張したときですが--、2週間ほど、プロダクト の機能・使いかたを指導する研修に参加しました。その研修では、まいにち、理解度を試す quiz (小 テスト) があって、最終日には、論述試験が課せられていました。研修参加者は、私を除いて、すべて、英語圏の人たち (30名ほど) でした。テスト の平均点が (5点評価で) 「3.8」 だったのですが、私は 「4.5」 をとりました。正直言って、講師がしゃべっている英語を私は、ほとんど、聞き取れなかった (苦笑)。で、最終日の論述試験を前にして、私は、講師に相談して、「英語圏の人たちと (英語を母国語としていない) 私が、同等に、英語で論述試験をうけるのは公平でない」 ので、私は、「宿泊 ホテル に帰って答案を作成したい」 と言ったら、講師が承諾してくれたので、私は、論述試験の答案を ホテル で作成しました。そして、翌日、答案を講師に提出しました。私の得点は、最高点に近い点数でした。講師 曰く、「あなた (私のこと) は英語ができないと言ったが、見事な英文です」。それもそのはずで、私は、本 エッセー で述べた やりかた で英文を綴ったから (笑)。

 私は、英国 (ロンドン) で、データベース 設計に関して講演したことがあります。勿論、英語での講演です。英語圏の人たちに向かって英語を自由に語るほどの表現力は、(日本に生まれて、日本で育った) 私には、ない。講演に先だって、私は、講演用の英文を作成して、「書院」 (シャープ 社製の携帯 ワープロ 機) に収録して--当時、まだ、ノート・パソコン がなくて、ラップトップ しかなかったので、私は、小型 (B5 版) の 「書院」 を携帯していましたが--、壇上に 「書院」 を置いて、ときどき、英文を観ながら、しゃべりました。私が壇上に立ったとき、会場は、興味津々の空気が流れていました。すなわち、「東洋から来た」 ヤツ が、いったい、どういうことをしゃべるのか、と。私がしゃべり終わったとき、会場は、シーン と静まり返っていました。私は、「やっぱり、私の英語では通用しなかったか」 と落胆したときに、会場が割れんばかりの拍手が起こりました。私の拙い英語を かれらは真摯に聴いてくれたのです。私の英語は、下手くそな英語だったのですが、かれらは、私の 「意見」 を聴いてくれました。講演の後で、昼食会が催されて、私が座った テーブル は、満席になりました--多くの人たちが、私と語ろうとしてくれたのは、とても、嬉しかったのですが、講演の one-way traffic な スピーチ とは違って、ふだんの (ナチュラル な) 英語で対話するのは、私には、とてもとても、労苦でした (苦笑)。かれらは、帰り際、「とても良い話 (講演) を聴かせてもらった」 と謝意を述べてくれました。
 私は、英語力の自慢話をしているのではなくて、逆に、私の英語は、自慢じゃないけれど、下手くそですが、たとえ、下手くそな英語でも、なんらかの 「伝えたい意見」 をもっていれば、そして、それを一生懸命に伝えれば、かれらは、真摯に聴いてくれる、ということを言いたいのです。いくら、英語の発音がきれいでも、伝える中味がなかったら、聴くに値しない、ということです。この講演でも、私は、本 エッセー で述べた やりかた で、事前に、英文を用意していました。




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  佐藤正美の問わず語り