2008年 1月 1日 ゆく年、く る年 >> 目次 (作成日順)


 

 一年前の 「ゆく年、くる年」 エッセー で、私は、鬱状態が続いていると綴りました──すなわち、2006年度は、一年中、鬱状態が続いて、哲学・数学の学習が捗らず苦しんでいました。昨年 (2007年) も、同じ状態が続いて、さらに、やっかいなことには、「人間嫌い」 の性質が強く出てきました。エンジニア として、技術を駆使するという点では、「人間嫌い」 であっても、さらさら、仕事上、障 (さわ) りはないのですが、catalyst たる コンサルタント としては、「人間嫌い」 というのは致命的欠点です。

 幸い、コンサルタント として はたらく仕事では、ユーザ に恵まれていて、仕事上、「人間嫌い」 な性質は、毛頭、出てこないのですが、いったん、仕事を離れたら、ふだんの生活のなかで、その性質が いちじるしく出てきます (苦笑)。私は、仕事のない日に、まいにち、ほとんどの時間を──食事を除けば──哲学・数学の学習に没頭しています (寝るのも もったいないと感じるほどに、睡眠時間すら削って、学習に集中しています)。哲学・数学の学習に没頭していると言っても、私は、エンジニアであって、哲学者でもなければ数学者でもないので、勿論、それらの学習に先だってやらなければならない専門的事項の検討・検証があります。ただ、専門的事項の検討・検証を進めるうえで、どうしても、哲学・数学の知識・技術を使わなければならないので、哲学・数学の学習に集中している次第です。というのは、哲学・数学の知識・技術が増えれば増えるにつれて、みずからの専門技術の検証・拡張が進むから。

 ところが、哲学・数学の学習を進めれば進めるほど、私は、次第に、「人間嫌い」 になってきたようです。私が感じている 「人間嫌い」 というのは、対人関係のなかで苛立つ状態ではないし──ただし、相手が smart-alec であれば、そうとうな不快感を覚えますが (笑)──、会話が下手で対人恐怖症であるという訳でもない。私の感じている 「人間嫌い」 という感覚は、たぶん、強烈な虚無感のなかで、みずからが 「無意味」 に感じられて、ひとに会うのがおっくうである、という気分に近いのかもしれない。だから、私は、一人でいても、「人間嫌い」 の感覚から免れることはないようです (苦笑)。私は、ひょっとしたら、ウィトゲンシュタイン の言う 「蠅取り壺に陥った蠅」 なのかもしれない、、、。哲学・数学を本気で学習するなら──そして、もし、「精神」 が、知・情・意から構成されているとするなら──、「知」 のほかに、強靱な 「意」 がなければ、「情」 が揺らぐのかもしれない。喩えてみれば、(以前、「反 コンピュータ 的断章」 のなかで綴りましたが、) 知力を舟・櫓に見立てて海へ漕ぎ出たけれど、海が広大であって、漕いでも漕いでも、いっそう だだっ広い沖あい遙かにきて、夜になって、どちらのほうに向かえば良いのか がわからない状態なのかもしれない──陸にも戻れない、、、。そして、無力感・虚しさだけが増大する。私は、たぶん、そういう ジレンマ (Damned if I do, domned if I don't) に陥っているのかもしれない。

 哲学・数学は、学問の根本課程であると云われていますが、私のような シロート が、生半可な気持ちで踏み込んではいけない領域だったのかもしれない。もし、その世界に魅了されたならば、対価 (I must pay the price) として、世事と きっぱり縁を切る覚悟がなければならないのかもしれない。

 でも、私は システム・エンジニア です。システム・エンジニア として、事業過程・管理過程のなかで使われている 「情報 (帳票など)」 という確かな対象があれば、事業過程・管理過程のなかで、「日常経験の、在るがままの形の反省による充実」 を感じることができます。(参考)そして、やっかいな点は、その充実を感じるための 「反省」 には、高度な──哲学・数学にウラ打ちされた──思考力がいるということです。

 私は、今年も、こういうふうに悩み続けるのかしら、、、。

 私の頭のなかで、以下の 2つの アフォリズム が、いま、強烈に響いています。私の昨年の気持ちを表している アフォリズム でしょうね、きっと。

    運命は偶然よりも必然である。「運命は性格の中にある」という言葉はけっして等閑に生まれたものではない。
    (芥川竜之介)

    この身は尽十方界なり。ここまで自信をもっていないと、シッポ がでるぞ。
    ヤキモチ やいたり ノボセ あがったり シッポ が出るぞ。
    (澤木興道老師)

 
(参考) 「古典と伝統について」、小林秀雄、思想との対話 6、講談社



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  佐藤正美の問わず語り