2003年 5月 1日 作成 コンサルタント の服装 >> 目次 (作成日順)
2008年 5月16日 補遺  


 
 TH さん、きょうは、服装についてお話しましょう。

 
 ● 着ている服を地味に抑えながら強烈な存在感を出すのが プロ の職業人である。

 コンサルタント の服装には 「定番」 があります。
 日本では、ビジネス の服装に関する書物がほとんどないので、妙な身なりをしていても平然としている人々を多く目にするのですが、欧米では、服装 (や靴、時計、鞄、万年筆など) を観れば、その人が属している 「(社会的な) 階級」 を、ほぼ、判断できます。きょうは、「階級」 を論点にしたくないので、服装にかぎって述べてみましょう。
 (ちなみに、欧米の社会は、強烈な階級社会です。)

 或る ファッション・デザイナー が、かって、ビジネス・スーツ のことを 「どぶ鼠色」 と揶揄したそうですが、それはとんでもない無知であって、チャコル・グレー を着こなすのが成熟した大人の身なりです。
 ビジネス の服装の ルール は、以下の点に尽きます。

 「服装をできるかぎり地味にしながら、存在感 (presence) を出す。

[ 注意 ]
 小生は男なので、男性用の身なりに関する知識があるのですが、女性用の身なりに関しては知識がないので、女性の人たちは、申し訳ないのですが、服装に関する しかるべき書物を読んでください。

 
 ● スーツ、ネクタイ、ワイシャツ、ベルト、靴下、靴、コート などの考慮点。

(1) スーツ

 色は、チャコル・グレー や黒や濃紺がいい。ストライプ の プリント 地 (a print with a striped pattern) は避けてください。
 最近では、オーダーメード (a suit made to order) の仕立ての値段も廉価になっているので、できれば、オーダーメード がいいでしょう (いわゆる 「イージー・オーダー」 でよい)。

 ベスト (a vest、a waistcoat) は着用しないほうがいい。公の場所では、ボタン をはめます。ボタン が 2つ ボタン なら、上の ボタン をはめて、3つ ボタン なら真ん中の ボタン をはめます。

 同じ スーツ は2日続けて着ないこと。着用した スーツ は、直ぐに タンス のなかに入れないで、乾かしてから ブラシ をかけること。高級な生地の スーツ は ブラシ を丁寧にかけておれば、10 年程度は着用できます。ただ、ウエスト を、10年間、変化しないで維持できるかはべつの問題点ですが (笑)。私は、一度、持っているすべての スーツ の ウエスト 寸法を直しました(苦笑)。

 
(2) ネクタイ

 ネクタイ の幅は、スーツ の襟の幅と同じになる物を着用します。
 つまり、ネクタイ の下の広い幅と スーツ の襟の広い所の幅が同じような物を着用します。

 ネクタイ を締めたとき、ネクタイ の下縁が ベルト の位置にくるようにします。ネクタイ の下縁が ベルト よりも下にくるのはみっともない。アメリカ 人向けの ネクタイ は日本人の体には長すぎるようなので、ヨーロッパ 製 (フランス か イタリア) が日本人の身体に合うかもしれない。

 ネクタイ の色は スーツ の色と調和するようにしますが、スーツ が黒色であれば、ネクタイ の色は、たいがい、赤 (あるいは、ワイン・レッド) か青か黄か焦茶になるようです。

 
(3) ワイシャツ

 仕立てたほうがいいでしょう。というのは、ワイシャツ は、手首の所が スーツ の下から 1 センチ ほど出るようにしますから。勿論、既製の物でもいい (私のことを言えば、既製物と仕立て物の比率は 「3 対 1」 です)。基本的な ルール は、手首の所が、若干、スーツ から出るということです。

 色は白を基本としますが、最近では、薄い ブルー などの薄い色彩も OK のようです。

 ワイシャツ の腕には、名前の イニシャル などを縫い込まないでください。私は、いちど、いつもの店とはちがう所で仕立てたら、イニシャル が縫い込まれていました (苦笑)。

 
(4) ベルト

 黒色を基本とします。濃い焦げ茶色か濃い ワインレッド でもよい。
 金色などの バックル 物は避けてください。
 5 つ穴であれば、3 つ目の穴をはめるようにします。

 
(5) 靴下

 黒色。無地 (プリント 模様がない物)。
 スーツ を着用していて白色の コットン 生地の靴下は 「厳禁」 です。

 靴下の長さは、膝頭の下までくるような長めの物を基本とします。
 ただ、湿気の多い日本では、そういう靴下を着用すると蒸れやすいからか、長めの靴下を扱っている店がほとんどないので、入手するのがむずかしいですから、基本の ルール として、ズボン の下から肌が見えないようにすればいいでしょう。

 
(6) 靴

 黒色、紐結び。これしかない。

 そして、シューキーパー (型崩れしないように靴のなかに入れる木製の型取り) を使ってください。
 靴先が反り返っているのはみっともない。

 同じ靴は 2日続けて履かないこと。

 汚れがないように常に磨いてあること。

 
(7) コート

 色は、オフ・ホワイト か ベージュ です。
 黒色と紺色は、日本では OK ですが、欧米の正式な場所では避けてください。欧米では、紺色の コート は ブルーカラー の労働者が着用するとみなされていて、ミドル 階級以上の人々は、ビジネス では着用しないのが原則です。ただ、欧米でも黒色の コート を着ている人々を観ますが、おおかた、「私が ルール である」 という組織の トップマネジメント の人たちです (──あるいは、正式な晩餐会用です)。私は、日本では、濃紺の オーバーコート を着ています。そして、欧米に出張するときには ベージュ の オーバーコート を持参しています。

 基本的な考慮点は以上です。
 詳細に述べれば、1冊の書物になります。実際、欧米では、そういう書物 (ビジネス の身なりに関する書物) が、多数、出版されています。もし、欧米に出張する機会があったら、大きな書店を訪れて、そういう書物をいくつか購入してください。

 スーツ、ワイシャツ、ネクタイ、ベルト、靴下と靴くらいは基本の ルール を守ってください。
 スーツ というのは (ビジネスの) 制服です。制服は安心と尊厳を与えます。

 ビジネス では、身なり というのは、自己を主張するための化粧術ではなくて、相手に対して不快感を与えないことを原則としています。

 
 ● 鞄・時計・万年筆などの携帯品は地味な高級品を選ぶ。

 鞄、時計、万年筆などの携帯品にも 「定番品」 があります。それぞれの専門的な図鑑を参考にしてください。
 そして、そういう携帯品は、「地味な高級品を選ぶ」 という やりかた でいいでしょう。

 
 ● さらに詳しい身なりの エチケット・マナー を知るために。

 身なりや作法は TPO を前提にしていますから、(講演や取締役との会談がないときは) 私は カジュアル な服を着て仕事をしています。

 なお、もっと詳しい ルール を知りたければ、「読書案内」 (読書論・書斎術、91 ページ) のなかで記載した 板坂 元 さんの著作を参考にしてください。以上の身だしなみは小生 (男性) を例にしていますので、女性の読者は、身だしなみについて、それなりの書物を参考にしていただきたい。

 



[ 読みかた ] (2008年 5月16日)

 本 エッセー で認 (したた) めた服装作法は、いわゆる 「クラシック」 と云われている作法です。現代では、作法が、もう少し ゆるやかになっているようです。ただ、私は、企業の トップマネジメント に会うときや 講演のときには、いまでも、こういう服装をします。

 本 エッセー を認めたときには──もっと遡って 1990年半ば頃から──私は、クライアント の会社内で仕事するときも、ほとんど、カジュアルウェア で通しています。スーツ を着ることは、めったにない。普段着に至っては、ほとんど、作務衣を着ています。カジュアルウェア のときでも、作務衣のときでも、たいがい、首に タオル を巻いています──この タオル が、冬には マフラー 代わりになるし、夏には汗取りになるので、とても、気持ちいい。

 ジード (小説家) は、以下のように言いました。

 「見かけだけの価値は厳然と守ること、そして、見かけの価値以上に見せかけないこと」

 蓋し、名言ですね。
 いかなる服装をしていても、それを纏 (まと) っている人物の知性・徳性が いかがわしければ、身なり は、みすぼらしい中身を包んで隠そうとする装飾的な包装紙にすぎないでしょうね。ただ、初対面では、「服装も名刺の ひとつ」 として作用するでしょうね──初対面では、相手の人柄がわからないから、どうしても、会談 (相手) に対して、どのような配慮をしているか が問われるでしょう。

 「外見はどうでも、中身が良ければ、それでいい」 というふうに言われることもあるのですが、初対面で、相手が感服するほどの・人並み外れて すぐれた知性・徳性 (言い換えれば、「存在感」) を漂わせているひとなど、歴史上に遺る天才のみであって、われわれ凡人には、いないでしょう。文を綴るときに、「みずからの意見を相手が理解しやすい」 ように配慮した語彙・文 (構成) を使います。その態度を 「you-attitude」 というそうです。服装でも、同じように、「you-attitude」 が基本でしょうね。逆説的になりますが、みずからを理解してもらうには、相手のことを配慮するというのが基本態度なのでしょうね。




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  佐藤正美の問わず語り