2003年11月 1日 作成 | 万葉集 | >> 目次 (作成日順) |
2008年 4月 1日 更新 |
万葉集に関して、以下に掲載する書物は、万葉集を、単独に 「研究」 しようとして所蔵しているのではなくて、文学史のなかで、古今和歌集や新古今和歌集と対比しながら読むために所蔵している。 それが目的なので、文献を、万葉集研究のために、網羅的に収集しているのではないことを御了承ください。 |
[ 読みかた ] (2008年 4月 1日)
「万葉集 (二十巻)」 の最後の歌が詠まれた年は、759年 (天平宝字三年、淳仁天皇の代) です。710年に平城京遷都、712年に 「古事記」撰、752年に東大寺大仏開眼、そして、六国史のひとつである 「続日本記」 が797年撰。「万葉集」 に収録されている歌のなかで、仁徳天皇皇后の作といわれる歌が最も古いので、759年までの約 350年間に及んで、歌 (約 4,500首) が収録されています──歌数は諸説があるのですが、「国歌大観」 では、4516首としています。収録された歌が五世紀から八世紀までの長い年代にわたっているので、複数の撰者がいたのでしょうが、現存の形は、八世紀後半に、大伴家持が整えたとする説が有力です。 ちなみに、「万葉集」 の 「葉」 には、ふたつの語義 (「代」 の意と 「歌」 の意) があって、「万葉集」 の題意としては、「万代の歌をあつめた書」 という説と、「多くの歌をあつめた書」 という説があるようです。 4,500首の歌は、いくつかの部類べつに収められています (この部類べつのことを 「部立 (ぶだて)」 と云います)。特徴的な 「部立」 として、以下があります。
(1) 雑歌 (ぞうか) [ 宮廷の儀式などで歌われた ] ほかにも、「羈旅歌 (きりよか)」 (旅中の作) もありますが、雑歌・相聞などの部立の下位分類名として用いられているにすぎず、旅の歌が、いまだ、独立して意識されていないことを示しています。羈旅歌の部立が一巻を占めるようになるのは、「古今集」 以後の勅斤集になってからのことです。 「万葉集」 の歌体 (和歌の形態) は、以下のように分類されています。
(1) 長歌 (五七・五七・・・・五七七) 約 260首 歌の表記は、「万葉仮名」 です。 歌風は、「通説」 では、以下の四期に分けられています。
(1) 「T 期」 (天武朝末 686年まで)、口承歌謡・相聞歌が多い。長歌に秀歌の多いとのこと。
W 期の家風は、「優雅繊細な平安朝和歌に通ずる歌境を開いた」 というのが後世の評価です。 さて、万葉集の歌を すべて読み通したひとは、(国文学の専門家をべつとして、) どのくらい いるかしら──私は、「万葉集評釈 (語法・文法・参考)」 (次田真幸、清水書院刊、1965年 [ 高校生向きの参考書 ]) に収録されている歌を通読しましたが、「万葉集」 に収められている歌のすべてを読んではいない。それでも、冒頭歌の国見歌 (雄略天皇作) 「こもよみこもち ふくしもよ みぶくしもち このおかに なつますこ ...」 をはじめとして暗誦している歌は多い。私は、「万葉集」 に収められている 「素朴な相聞歌」 が好きです。賀茂真淵 (「万葉考」 1768年) は、「万葉集」 の歌風を 「益荒男振 (ますらおぶり) [ 男性的で、おおららか ]」 と評しましたが、「ますらお」 が 「たおやめぶり」 を吐露している以下の歌も、「万葉集」 のなかに収められています。 ますらおと思へるわれや水茎 (みずき) の上に涙拭 (のご) はむ (巻六)
この歌は、現代 「サラリーマン 川柳」 の和歌版の響きがしますね (笑)。
(1) 春霞たつを見捨ててゆく雁 (かり) は花なき里に住みやならへる 正解は、(2) です──ちなみに、(1) は、「古今集」 の歌です。そういうふうに考えれば、上述した歌 「ますらおと思へるわれや」 の歌も 「万葉的」 ですね。勿論、万葉集の 「W 期」 は、平安時代が後続するので、「W 期」 の歌は、平安朝和歌へ通じる 「暗喩に近い修辞法を使った知的趣向、七五調な流麗さ」 を宿しています──たとえば、以下の歌がそうしょう。 うつせみの常なき見れば世間に心つけずて思ふ日そ多い (大伴家持) 和歌は、「古今集」 の歌風を、さらに進めて、「新古今集」 では、「幽玄 [ 深さ ]・有心 [ 妖艶な情趣 ] を表現して、実感を再構成した仮象美」 までに高められます。歌風の こういう進みのなかで、「万葉集」 は、平安時代から江戸時代まで、いちぶの歌人が感応しただけで、後世に対して、ほとんど影響を与えなかった──ちなみに、江戸時代まで、和歌表現の基調になっていたのは 「古今集」 です。 明治時代になって、正岡子規が 「万葉集」 を再評価して伝統的な・公家的な和歌を斥ける 「短歌革新」 を唱え、この流れを アララギ 派歌人たち (島木赤彦、斎藤茂吉、土屋文明ら) が継承して、近代短歌の主流を形成しました。本 ページ でも記載したように、斎藤茂吉・土屋文明は、「万葉集」 の評釈書を記しています。 |
▼ [ 史料、資料 ] ● 萬葉集、鶴 久・森山 隆 編、おうふう ● 万葉集 本文篇、佐竹昭広・木下正俊・小島憲之 共著、塙書房 ● 作者別 万葉集、土橋 寛 編、桜楓社 ● 万葉集總索引 漢字篇、正宗敦夫 編、平凡社 ● 萬葉集代匠記 (第一輯〜第五輯、附録)、契沖 撰、木村正辞 校訂、早稲田大學出版部 ● 萬葉集古義 (第一〜第三、總論 索引)、鹿持雅澄 編、山田安榮・伊藤千可良・岩橋小彌太 校、国書刊行会 ● 本居宣長全集 第六巻 (萬葉集玉の小琴 ほか)、大野 晋・大久保 正 編、筑摩書房 |
▼ [ 現代語訳、英訳 ] ● 譯萬葉、村木C一郎、筑摩書房 ● 万葉集 訳文篇、佐竹昭広・木下正俊・小島憲之 共著、塙書房 ● 新版 新校 萬葉集、澤瀉久孝・佐伯梅友 共著、創元社刊 ● 萬葉集私注 (一〜十)、土屋文明、筑摩書房 ● 萬葉集上野國歌私注、土屋文明 著、煥乎堂 ● 防人歌古訓注釈集成、星野五彦 編著、教育出版 センター ● 万葉秀歌評釈、井上 豊、古川書房 ● 萬葉百歌、山本健吉・池田彌三郎 著、中公新書 19 ● 万葉秀歌 (上・下)、斎藤茂吉 著、岩波新書 ● 萬葉集評解、佐伯梅友 著、友精堂 ● 萬葉集全講 (上・中・下)、武田祐吉 著、明治書院 ● Man'yo^shu^ (volume one)、Ian Hideo Levy、University of Tokyo Press = Princeton University Press ● 対訳 万葉恋歌 (Love Songs from the Man'yo^shu^)、リービ 英雄 [ 英訳 ]、大岡 信 [ 解説 ]、講談社 |
▼ [ 概説書、解説書 ] ● 萬葉集入門、土屋文明、筑摩書房 ● 萬葉集私見、土屋文明 著、岩波書店 ● 萬葉集年表、土屋文明 編、筑摩書房 ● 萬葉研究 (上・下)、斎藤茂吉 著、岩波書店 ● 万葉集 (古典を読む 21)、大岡 信 著、岩波書店 ● 萬葉集考叢、山田孝雄 著、寶文館 ● 萬葉集の語法、竹内隆衛 著、廣川書店 ● 難歌解論、高橋公麿 著、日本歌謡芸術協会 ● 増補 古代和歌、五味智英、笠間書院 ● 万葉びとの憧憬--民俗と文芸の論理--、桜井 満 著、桜楓社 ● 万葉集を読む、石川榮一、近代文藝社 ● 万葉通説を疑う、吉永 登 著、創元社 ● 万葉集 歌の原形、姜吉云、三五館 ● もう一つの万葉集、李寧煕、文藝春秋 ● 枕詞の秘密、李寧煕、文藝春秋 ● 万葉集の服飾文化 (上・下)、小川安朗、六興出版 ● 萬葉集の民俗学的研究、中山太郎 著、校倉書房 ● 検証・万葉びとの暮らし、土屋正夫 著、表現社 |
▼ [ 辞典、事典 ] ● 万葉集を読むための研究事典、國文學 第 30巻 13号、學燈社 ● 万葉集必携 U、稲岡耕二 編、別冊國文學 NO.12、學燈社 ● 万葉集事典、稲岡耕二 編、別冊國文學 NO.46、學燈社 ● 万葉集 ハンドブック (「万葉集」 のすべてがわかる小事典)、多田 一臣 編、三省堂 ● 必携 万葉集要覧、桜井 満 編修、桜楓社 ● 萬葉集 枕詞辞典、朴炳植、小学館 ● 万葉ことば事典、青木生子・橋本達雄 監修、大和書房 ● 万葉の歌ことば辞典、稲岡耕二・橋本達雄 編、有斐閣選書R ● 萬葉集事典 (「萬葉集講座」別巻)、久松潜一 監修、有精堂 ● 萬葉集辭典、佐佐木信綱 編、中央公論社藏版 ● 増訂 萬葉集辭典、佐佐木信綱 編、有朋堂 ● 萬葉集事典、佐佐木信綱 著、平凡社 ● 萬葉集歌人事典、犬養 孝・五味智英・小島憲之 監修責任、雄山閣出版 ● 萬葉集 大和地理辭典、阪田 保 著、創元社 |
<< もどる | HOME | すすむ >> | |
▼ 読書案内 |