2004年 5月 1日 作成 | 認知 と 法則 | >> 目次 (作成日順) |
2008年 6月 1日 補遺 |
(1) 持続する現実的な事物
(1) は、たとえば、山だとか岩だとか、あるいは、人間でいえば、「魂」 とか。 科学は、「自然の法則」 の考えかたを前提にしています。つまり、現実の世界のなかでは、つねに、或る 「(固定的な) 規則」 を示す事物が数多くある、ということです。規則正しい反復が 「法則」 として示される、ということです。規則正しい反復 (つまり、「法則」) という考えかたは、技術や方法、および学問が成立するための不可欠な前提です。
しかし、数多くの人々がおこなう様々な行為を対象にして、「法則」 の考えかたを適用するは至難の作業です。 したがって、事業に対して、「法則」 の考えかたを適用するなら、以下の 3 点を考慮しなければならないでしょうね。
(1) 1 つの作用 (作業、手続き) の単位を、どのようにして、認知するのか。 以上の 3 点を対象にしたとき、「モデル」 という考えかたが論点になってきます。つまり、「モノ と関係」 を、どのようにして、記述するのか、という点が論点になってきます。 モノ を考える際、ホワイトヘッド 氏が提示した以下の 3 つの概念が役立ちます。
(1) 持続する現実的な事物
ホワイトヘッド 氏は、(1) および (2) を 「出来事」 のなかで考えています。ホワイトヘッド 氏が云う 「出来事」 は、「event」 ではなくて、「occasion (機会)」 です。ちなみに、(2) の 「生起」 は、occurrence です。 「科学的認識の基礎」、藤川吉美 訳、理想社、昭和 45年 さて、おおまかに言えば、「持続する現実的な事物」 が 「物 (事物)」 であり、「生起する現実的な事物」 が 「事 (事象)」 でしょうね。事業のなかで使われている データ を対象にして言えば、従業員とか部門とか商品などが 「持続する現実的な事物」 であり、契約とか出荷とか請求などが 「生起する現実的な事物」 であり、色だとか単価などが 「反復する抽象的な事物」 でしょうね。 したがって、モノ (持続する現実的な事物、生起する現実的な事物、反復する抽象的な事物) に関して、以下の 2 点を、どのようにして記述するか、という点が 「モデル」 の論点でしょうね。
(1) 認知単位 (モノ を、いかにして、記述するか) |
[ 補遺 ] (2008年 6月 1日)
本 エッセー で おおまかに説明した・ホワイトヘッド 氏の哲学を私 (TM) は、直接に前提にしていないのですが、(TM が使っている) 「resource と event」 概念を検討するために、かれの哲学は非常に役立ちました。「モデル」 は、「個体と関係」 概念を使って、ひとつの 「構成」 を作るのですが、「個体と関係」 を、いわゆる 「事物と事象 (『もの』 と 『こと』)」 で説明しても、なんら、概念を明らかにしてはいないでしょうね──なぜなら、「事物と事象 (『もの』 と 『こと』)」 に関して定義が与えられていないから。ホワイトヘッド 氏は、数学者でしたから、勿論、「モデル」 を関係主義 (「関係」 が一義的で、「個体」 は変項である、という考えかた) に立っているのですが、「自然科学が取り扱う対象」 として かれが列挙した 4 つの対象は、私 (TM) が 「resource」 として扱っていた──そして、「resource」 として扱ったことに対して悩んでいた──或る対象に言及されていて、TM を験証する際に、かれの考えかたは、とても役立ちました。 TM のなかで 「resource」 として扱われる対象に関して、私が悩んでいた対象は、たとえば、「カラー・コード」 や 「サイズ・コード」 を認知番号 (個体指定子、entity-setter) として 「カラー (色)」 や 「サイズ (寸法)」 を 「認知」 したとしても、それらが現実的事態のなかで単独の個体ではない──言い換えれば、「真理条件」 として、個体として 「F-真」 を験証できない──という点でした。すなわち、「カラー (色)」 や 「サイズ (寸法)」 は、「(単独の) resource」 として扱うときに、どういうふうに説明すれば妥当なのかということがわからなかった。ホワイトヘッド 氏が、それらの概念を 「反復する抽象的な事物」 として説明していたのを読んで、私は、納得しました。もし、それらの概念が 「反復する抽象的な事物」 であれば──そのままの概念であれば、それぞれのひとごとに 「認知」 のしかた (「認知するとか認知しないということ」、そして 「認知する範囲」) が様々になる危険性が高いので──、「個体指定子 (「情報 (帳票、画面などのなかで使われている・対象を指定するコード)」) を使って、「合意」 という行為を適用できるでしょう。 関係の論理 aRb (「a は、b に対して関係 R にある」 と読みます) を R (a, b) として考えて、関数 f (x, y) として扱うのが関係主義です──数学の やりかた です。それぞれの個体 (ここでは、a とか b とか x とか y、それらを 「項」 とも云います) が、「情報」 のなかで使われている語彙 (観察述語) です。たとえば、「従業員番号」 を 「認知番号 (個体指定子)」 にして、以下の tuple を構成できます──それぞれのセット (項のあつまり) の 「直積」 として考えて良いでしょう。 {従業員番号、従業員名称、年齢、・・・}. この例では、従業員番号を起点にして、ほかの項 (たとえば、従業員名称や年齢) が 「関数従属性」 (one-to-one correspondence) を実現しています──ただ、それぞれの項のあいだに、(関数の変項であれば当然に要請される) 「並び」 が歴然として存在するかと問えば、存在しないでしょうね。たとえば、上述した例では、{従業員番号、年齢、従業員名称、・・・} という構成でもかまわないでしょう。すなわち、現実的事態 (「情報」 のなかで使われている語彙) を対象にしたときに、かならずしも、「関数」 が厳密に適用できる訳ではない、ということです。「関数」 を使って──そして、セット 概念 (ZF の公理系) と第一階述語を使って──データ 構成法を示した モデル が コッド 関係 モデル (リレーショナル・データベース の基礎になった モデル) です。 TM は、コッド 関係 モデル に対して、意味論を 「強く」 適用した モデル です。TM が、モデル 上、争点にしたのは、以下の 2 点です。
(1) 個体の 「認知」 TM は、モデル として、R (a, b) という関数的構成法を基本形にしながらも、いっぽうで、「個体の認知」 に関して、「合意」 という行為を重視しました──そのために、「情報」 のなかで使われている個体指定子 (entity-setter) を 「認知番号」 として、「合意された認知」 として 「個体」 を構成します。そして、個体のあいだに観られる 「関係」 も、「対称性・非対称性」 を考慮して──言い換えれば、「構成」 のなかで、「『並び』 が争点になる データ」 と 「『並び』 が争点にならない データ」 を類別して、関係文法 (構成法) を用意しました。この ふたつの争点が、本 エッセー の最後に まとめた 「認知単位」 「因果律」 です。 TM では、「『並び』 が争点になる データ」 のことを 「event」といい、「『並び』 が争点にならない データ」 のことを 「resource」 というふうに云ってきましたが、それらの概念は、正確に言えば、それぞれ 「case (事態)」 と 「subject (主体)」 としたほうが良いでしょうね。 |
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