2004年 9月16日 対応表と 「HDR-DTL」 のちがい >> 目次 (作成日順)
  ● QUESTION   対応表と 「HDR-DTL」 のちがいは、どういう点にあるのか。
  ▼ ANSWER   対応表は、単独の 「event」 として作用しない。
2009年10月 1日 補遺  



 対応表と、「HDR-DTL」 の DTL は、形態として、似ている。

 対応表は、「event」 の系列のなかで、先行 「event」 が 後続 「event」 に対して、集合的には、多価関数になっているので、周延的に──それぞれの メンバー の関係として──演算するために用意された 「マッピング・リスト (mapping-list)」 である。数学的には、古い言いかたではあるが、「上への関数 (onto-mapping)」 というふうに云われている関係である [ f (A) = B ]。

 対応表は、系列が成立する entity (event) のあいだに起こる対応関係 (多価関数) であるが、「HDR-DTL」 は、「resource」 と 「event」 のあいだに起こる対応関係である。「関係 (relation) が、そのまま、モノ になる」 という タイプ 2 の現象 (モノ) であり、かつ、DTL が、単独の 「event」 として作用できる。いっぽう、「対応表」 は、単独の 「event」 として作用しない。

 数学的には、関係を集合 (クラス) として扱うことができるが──関係の クラス を 「ファンクター」 というが──、T字形 ER手法では、クラス 概念を使わないし、モノ (entity) を、以下のように定義している。

    entity とは、認知番号が付与されている モノ

 そして、T字形 ER手法では、entity は、「resource」 と 「event」 の 2つの サブセット として扱われる。
 単独の認知番号を付与されない モノ は、entity ではない。したがって、「対応表」 は、entity ではない。「対応表」 は、(entity に対して適用する) 「4つの推論 ルール」 に従って導出される項目であって、entity そのものではない──それゆえ、対応表は、(R) のみから構成される。

 対応表は 「関係」 の記述であり、「HDR-DTL」 は 「entity」 の記述である。

 



[ 補遺 ] (2009年10月 1日)

 本 エッセー は ほぼ 5年前に綴られましたが、今となっては訂正しなければならない文があります。本 エッセー では、「T字形 ER手法では、クラス 概念を使わない」 としていますが、TM (T字形 ER手法の改良版) では、クラス 概念を使っています──TM で使っている スーパーセット は、クラス 概念そのものです。

 TM が クラス 概念を使うようになった理由は、「HDR-DTL」 構成に対応するためです。「HDR-DTL」 を、技術的には、合成関数 [ ふたつの関数を合成した関数 ] として説明することもできますが、争点になるのが、TM の定義 [ entity の定義 ] によって、合成関数が ひとつの entity になる、という点です──すなわち、本 エッセー のなかで述べたように、「『関係』 が、そのまま、モノ になる」 という点です。したがって、「関係」 を entity としてみとめるのであれば、クラス 概念を導入したほうが妥当 [ 簡便? ] です。そして、いったん、クラス 概念を導入したならば、「概念的 スーパーセット」を──クラス 概念そのものですが、クラス としての 「性質」 を記述しないという点で、「概念的」 という形容詞を付していますが── entity に対して適用して、entity の構成を験証したほうが役立ちます。

 たとえば、「出荷先」 entity と 「請求先」 entity が存在すれば、それらの entity に対して、「取引先」 という クラス を構成して、次に、クラス を セット に翻訳して、「出荷先」 および 「請求先」 を サブセット に読み替えて、「構成」 の妥当性──すなわち、サブセット のあいだに 「切断 (排他的 OR 関係)」 が適用できるかどうか──を調べればいいでしょうね。もし、「出荷先」 entity と 「請求先」 entity のあいだに 「まじわり」 が生ずるのであれば、なんらかの対応をしなければならないでしょう。

 さて、「対応表」 は、本 エッセー で述べたように、「写像関数 (あるいは、写像集合)」 であって、entity ではない点に注意してください。TM では、entity は以下のように定義されています。

   Entity である = DF 個体指定子を付与されている管理対象である。

 Entity は、勿論、「集合」 ですが、「集合」 には、他の構成物 (たとえば、対照表) が存在します。すなわち、entity は 「集合」 の真部分集合であって、「集合」 は すべて entity である訳ではない。「対照表」 は、ふたつ (あるいは、ふたつ以上) の 「集合」 が構成する 「和集合」 です。でも、「対照表」 は、entity ではない。同様に、「対応表」 は 「写像集合」 ですが、entity ではない。この点を理解していれば、「対応表」 と 「HDR-DTL (の DTL)」 を混同することはないでしょうね。





  << もどる HOME すすむ >>
  データ解析に関するFAQ