● ユーザ要件の捕捉漏れ
ユーザ 要件の捕捉漏れとは以下の2つをいう。
(1) インフォーマル・システム の捕捉漏れ
(2) CSF (Critical Success Factor )の捕捉漏れ
SDLC を アプリケーション 単位に適用した ソフトウェア・エンジニアリング が、以下の「重複」を蔓延したことは、すでに述べた(「DOA の進化形 [ DOA+ ]」を参照されたい)。
(1) 20倍の データ名重複
(2) 70%の データ重複
(3) 90%の無駄プログラム
すなわち、1つの アプリケーション・システム を例にすれば、1つの データ項目に対して平均 20個の マチマチ な名称が プログラム のなかで使われ──たとえば、従業員番号という1つの データ に対して、EMP-NO や E-NUMBER や E-N など マチマチ の データ名称が付与されていて──、データ・ストーレッジ のなかに収められている データ の 70%が重複していて、(或る生命保険会社の例では、) 過去に作成された プログラム の ソース・コード の 90%が無駄であった、という調査が報告されている。
このような状態のなかで、メンテナンス の整合性が崩れて、コンピュータ が出力する数値が、たとえば、同じ数値であるべき売上高の数値が複数の レポート を 比べたら マチマチ の数値(近似値ではあるが、、、)表示されている、という現象が起こっている。
コンピュータ の数値を信用していない エンドユーザ は、自らの仕事を守るために、仕事のなかで使う データ あるいは情報を隠蔽して使っている。仕事のなかで隠蔽されて使われている数値こそが、仕事を実際に運用している数値なのである。すなわち、フォーマル な コンピュータ・システム とはべつの世界として インフォーマル・システム が稼働している。
責任持って事業過程 (購買過程・生産過程・販売過程・財務過程・労務過程) のなかで仕事をしたことのない システム・エンジニア が、エンドユーザ の従事している「業務を直接の対象として」分析できるのかどうか、、、あるいは、複数の エンドユーザ が隠蔽している インフォーマル・データ(または、情報)を捕捉できるのかどうか [ できない(!)]。また、責任持って経営過程のなかで仕事をしたことのない システム・エンジニア が、「事実を記述する」ことができなければ、環境変化と事業の現状を対比して、事業の環境適応能力を判断して CSF を考えることができるのかどうか [ できない (!)]。
したがって、SDLC の最初の段階(分析工程)において、われわれが再検討しなければならない点は、「事実の記述(事業の現状を記述すること)」とはどういうことなのか、という点である。